環境・CSR対応、今後のアパレル製造業
“今の日本のファッション製品は世界で通用しない”
ーーエコテック・ジャパン株式会社 近藤 繁樹代表取締役社長
update: 2013/07/08
アパレルというモノを作って売る企業は、いわゆる、ブランドという暖簾を持っている。それは、どういうものかといえば、品質がいい、デザインがいいというのは当たり前で、企業が具備しなければならない社会的責任が伴ってこそのブランドなのだが、そこが十分認識されているとは言い難い。衣料の安全性について日本は無法地帯となっているからだ。これまで輸出してこなかった背景もあるが、モノを作る、モノを売る仕組みは世界基準から大幅に立ち遅れているとエコテック・ジャパンの近藤繁樹代表取締役社長は言い切る。驚くべき現状を語っていただいた。
立ち遅れる
日本の安全性
CSRとは、corporate social responsibilityの略で、社会的な企業の持つ説明責任と訳される。企業は利益を追求するだけでなく、その組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、社会全体から求められることに対して適切な意思決定をすることを指す。
企業活動は利害関係者(消費者、投資家等、および社会全体)に対しての説明責任があり、説明できなければ社会的に容認されないことになり、信頼のない企業は生き残っていくことができない。そして、企業の意思決定を判断する利害関係者である消費者の市民としての社会的責任が持続可能な社会には必要不可欠と言われている。
つまり、こうした社会的基盤があってこそ、アパレルや小売りは成り立つビジネスだ。ところが、日本では衣料品の安全性という点で問われているのはホルマリンなど一部、発がん性物や塩素系、アレルギー物質など世界で使用禁止されているものが日本では規制されていない。そのための法令がないためで、モノづくりの背景(とくに、海外生産の場合)も不明のままだ。
「途上国などでは児童労働や紛争がまだまだあります。そうした地域でモノを作りながら実状を知らない、あるいは、そこに責任を持たないということは児童労働や紛争に賛成や加担しているのか、それを認めて安く売っている企業なのか、という風に見られてしまうのです」
現状を知らない、関係ないと思っている日本の企業は今なお多いとエコテック・ジャパンの近藤 繁樹代表取締役社長は指摘する。
「日本で世界トップの認証機関からレーベルを取得している企業といえば、エドウインとダイドーリミテッド、イオンなど。世界でチェーン展開しているH&MもGAPなど、海外の大手SPA企業は当然のこととして認識し、実践しています。なぜか、日本の大手アパレルでは、そういった考え方やプロセスを導入していません。企業として担うべき社会的責任のためのコストなのですが…。一方、社会的規範に反している企業から買わない、そういう企業が売ることを容認しないという消費者に対しての啓蒙や教育も必要です。企業はこうしたごく当たり前の基本を守ってこそ、世界から調達していると言えるのです」
ブランドという資産形成が
世界で戦うには必要
海外の縫製工場が火事になり、労働に従事していた人たちがたくさん亡くなっているというニュースが毎週のように伝えられている。なかには一度に数百人が死亡しているケースもある。
「そうした工場を調べてみると、消火器が設置されていなかったり、非常口がなかったり、という事実が出てきています。そんな労働環境だから賃金も安いという事実を日本の企業は知る術もありません。安全性は商品だけでなく、働く人の環境(労働時間、残業代や施設など)に対して、そして作る環境(工場からの排水、廃棄、廃棄物処理など)に対しても問われるものなのです」
日本の企業は中国に進出して20年経つが、当初は縫製工場での残業代をいくら支払うのかさえ知らなかったという。中国の労働基準法では平日は50%アップ、土曜は2倍、祭日は3倍になる。国によって労働基準法は異なるわけで、権利も主張されることも当たり前。それを知らなかったでは済まされない。問題の根は深く、複雑だ。
「欧米は中国進出に際しては、まず職場の安全性と社会的責任を問うています。つまり、非常口があるか、消火器、避難経路などが備わっているという当然のことをきちっと整備した工場でないとオーダーしないのです。日本はコストと納期の交渉ばかり。重要なのは社会や環境の世界ルールを守り、明確な基準を持って工場とのパートナーシップを選別していくことです」
日本の消費者は安さの理由を探ることをあまりしない。そういった社会の仕組みを育ててこなかったからだ。モノづくりにおいても、極端に言えば、今のやり方では日本のオーダーを海外の工場が受けなくなっていくかもしれない。
「ただ、日本のジーンズ業界はサプライチェーンがしっかりと構築されており、透明性があります。具体的に言えば、誰が糸を買って紡績して、誰が織って、誰が染色して、どこの縫製工場で作ったのか、というサプライチェーンが出来ています。サプライチェーンとは伝票を電子化することでは決してありませんからね。これがきちっとしていれば安全性についての試験や検証などしなくても互いの信頼でモノづくりができるわけです」
以上の活動に対しては、世界的な監査機関の監査を受け、第三者の評価を受ける必要がある。エコテック・ジャパンもそのひとつで、本社はドイツにある。主な業務は、国際基準をもとに各社のスタンダードを作り、監査と評価、そして、改善を繰り返し、認証を行う。具体的には、製品の安全性、環境保護、社会的責任、労働条件と職場の安全性など、大きく4つの社会的要求事項があるという。
いずれにしても、パートナーになるためには相互理解に基づく透明性が必要で、各企業がスタンダードとなる基準を文書化し、マニュアルを世界標準化して互いに合意して実践していくことであらゆることがレベルアップしていく。世界で戦うためには必要不可欠な標準化といえるだろう。
安全性における規制は消費者を守るためにある。そのため、ヨーロッパでは16年ほど前から、アメリカでは5、6年前から、そして、中国も昨年から強制法規制をスタートさせている。さらに、アレルギーや発がん性など疑いのある高懸念物質も使用禁止になっているという。日本はファッション業界だけが世界基準から大幅に立ち遅れていることを改めて認識する必要があるようだ。
(有限会社ビジョンクエスト・田中千賀子)
第11回「CSR&コンプライアンス国際フォーラム2013」セミナー
(2013年5月21日開催)
はじめに、本研究フォーラム会長の法政大学大学院教授の岡本義行氏が、「ここ5年ほど、北欧は経済のパフォーマンスが良くなっている。企業人でも博士号を持つ人が多く、社会の中に生涯教育を埋め込んでいく地道な努力を続けている。つまり、人を中心としたシステム構築がポイントで、世界標準のコンプライアンスがより重要になっている」と開会の挨拶をした。
基調講演では、「サプライチェーン管理の標準化と評価」というテーマで本研究フォーラムの近藤繁樹事務局長が講演。「いいパートナーに恵まれてものを作っているかという点で、日本は原料を海外から調達しており、加工や製品化、販売のプロセスに伴うサプライチェーンの管理手法が問われている。洋服でいえば、表生地の安全性だけでなく、裏地、芯地、ボタンなどについても互いが評価しあいながら、安全性の世界標準化に照らしあわせた、透明性のある社会的な企業の持つ説明責任ができてこそ、川上から川下に向けて信頼できるサプライチェーンが成り立つ。ゆえに、マネージメントホットスポット、すなわち、どこに問題点があるのかをつねに認識しなければならない」
「リサイクルリング~FUKU‐FUKU.PLA-PLUSプロジェクト」というテーマで、日本環境設計株式会社・代表取締役社長の岩元美智彦氏が講演。「消費者のための新しいリサイクル運動として、リサイクル技術だけでなく、回収の仕組み、ブランド化へとつなげていくリサイクル文化の創造を提案。リサイクル技術では、まず綿繊維をバイオエタノール(重油代替燃料)にする糖化技術を開発。次に、使用済み携帯電話を油化し、金属類をリサイクルする技術を開発。さらに、有機物をガス化し、エタノールへリサイクルするプロセスを開発。回収の仕組みづくりでは、FUKU‐FUKUプロジェクト、ユニフォームリサイクル、国内外の携帯電話リサイクル(国内では55%のシェア)、PLA‐PLUSプロジェクト(専用の回収袋を製作、古くなった文房具やおもちゃなどのプラスチック製品のリサイクル)、その他リサイクル(統合型)を展開。PLA‐PLUSプロジェクトは今年度、回収実施店舗数140店、回収袋配布50万枚、消費者訴求数約5000万人を想定し、生活のさまざまなシーンで効果的なリサイクル手法であることを訴求していく」
さらに、「サプライチェーン調達におけるパタゴニアの事例」について、パタゴニア日本支社・環境ディレクターの篠 健司氏は、「長くビジネスを続けていくには健全な地球環境が必要不可欠。当社は設立から40年が経ち、70、80年代のフリース開発が大きな成長につながったが、製造過程で環境負荷を感じ始めた80年代終盤から90年代初頭に素材のアセスメントを実施。すべてが汚染を排出していることからPCRフリ―スを販売(1993年)、オーガニックコットンへ切り替える中で素材だけでないと、それぞれに適切なサプライチェーンを構築。7年ほど前からウェブのミニサイトとして“パタゴニア・フットプリント・クロニクル”を設け、企業のあり方と行動を検証し、アパレル産業で行われている習慣を正すことを目的に、サプライチェーンを環境的・社会的な側面から透明性高く公開する包括的な活動として取り組んでいる。また1年半ほど前から、リサイクルを最終のオプションとする、コモンレッズ・イニシアティブ‐5つの“R”(リデュース、リペア、リユース、リサイクル、リイマジン)を提唱している」と講演した。
DATA
企業名/エコテック・ジャパン株式会社
所在地/東京都港区西新橋1-14-7 山形ビル3F
TEL/03-5157-3180
代表者/近藤 繁樹
http://www.eco-texj.co.jp





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