ワールド 2015年3月期 連結決算
各部門で減収するも利益は確保
中期3カ年計画で抜本的な立て直し図る

update: 2015/05/20

ワールドの2015年3月期連結決算（非上場）は、各部門で売り上げが減少したが、利益は確保した。昨年4月の消費増税の影響が大きかったほか、円安の為替もコスト高につながった。また、企業体の抜本的な立て直しを図るため、2016年3月期を初年度とする3カ年計画を策定し、再成長を目指す。

ブランド売上推移はまだら模様に

当期から、国際会計基準（IFRS）を適用したため、前期までの日本会計基準による決算数値と単純比較ができない。参考に、日本会計基準による2014年3月期の財務諸表を併載した。2015年3月期の財務諸表は前年度の比較も含めすべてIFRSで計算した。日本会計基準とIFRSの数値算出方法が同一でないため、別表の決算数字は参考値として参照されたい。類似する項目および該当数値を使用し、各指標を計算した。詳細はまとめて欄外に注釈を付けている。なお日本会計基準では、当期利益が約7億円と黒字化を達成した。

全品目で減収になった（別表参照）。前述の通り、店頭の購買意欲が減退し、売り上げが伸び悩んだ。特に子供服が2ケタ減と落ち込んだ。主なブランド別の推移は、「百貨店SPA業態」の「アンタイトル」が220億円（7.4％減）、「リフレクト」が88億円（3.5％増）、「タケオキクチ」が141億円（5.1％減）。「SC・駅・FB業態」では、「ハッシュアッシュ」が147億円（8.8％減）、「インデックス」は105億円（3.0％増）と堅調だった。

「ストア業態」では、「オペークドットクリップ」が135億円（8.3％増）と健闘した。「シューラルー」が200億円（0.9％増）と堅調だった。「雑貨業態」の「イッツデモ」は70億円（3.3％増）、「ワンズテラス」が74億円（15.5％増）と好調だった。EC業態の「ワールド オンライン ストア」は131億円（3.4％増）だった。

今期は10－15ブランド、400－500店舗をスクラップ

2016年3月期を初年度とする3カ年計画では、①「既存事業の選択と集中」による事業の最適化と②プラットフォーム（PF）による価値の創出の2点を重点施策に掲げる。今期は「コスト削減の徹底・完遂」がテーマ。17年3月期および18年3月期は「PFによるコスト競争力の確保、コスト削減の継続」が取り組み課題になる。

改革初年度の今期は、不採算事業の10－15ブランド、不採算店舗400－500店舗をスクラップする計画だ。同時に展開型数を削減し、商品設計・管理を徹底する。PF戦略では、粗利ロスや原価率、ソフト価値、販売力の改善を目指すほか、デジタル化・EC化、海外事業の再構築に力を入れる。

中計2年目の17年3月期には、営業利益100億円超を目指す。最終年度の18年3月期には、再成長へ向けた新しい領域の拡大を視野に入れている。今年4月14日、新社長に就任した上山健二（かみやま・けんじ）代表取締役 社長執行役員は、「3カ年計画で高収益企業に生まれ変わる。聖域を設けず固定費をスリム化する」と語った。どのブランドや店舗をスクラップするのかについては、「お取引先もあるので、追い追い公表していきたい」と述べるにとどまった。

10－15ブランド、400－500店規模をスクラップする改革は、同社にとって過去最大規模のようだ。今期はスクラップの影響で一旦、収益は下がるが、その効果が表れる来期には、営業利益100億円超を目指す。期待ブランドは「シューラルー」「リフレクト」「インデックス」など。卸ビジネスも強化するという。また、ECビジネスも現状130－140億円規模を「300億円規模に近付けたい。EC主体のブランド立ち上げも考えている」（上山 社長）と積極的に拡大する方針だ。

財務面は悪化傾向に

財務面は悪化傾向にある。会計基準の変更で単純比較は難しいが、各指標は軒並み低下している。棚卸資産、いわゆる期末在庫も316億2,000万円（24億2,300万円増）とやや増えた。

従来のROAに該当する「資産合計税引前利益率」は3.4と改善した。ROEに該当する「親会社所有者帰属持分当期利益率」もプラスに転じた。自己資本に該当する「親会社の所有者に帰属する持分」が微増したが、まだ比率は低い。有利子負債が約1,100億円計上されており、この削減も喫緊の課題だと思われる。