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島精機製作所、2020年3月期 連結決算
“コロナ禍”が影響し、減収・損失を計上

update: 2020/05/14

島精機製作所、 島三博 代表取締役社長

島精機製作所、
島三博 代表取締役社長

島精機製作所の2020年3月期連結決算は、新型コロナウイルスの拡大に伴う設備投資の抑制が大きく響き、減収・損失を計上するに至った。売上高は2期連続の減収、当期損失は2012年3月期以来、8年ぶりの計上となる。全地域、全部門で減収となった。昨年来、アパレルメーカーに生産調整の傾向が見られていたが、コロナウイルスの発生が追い打ちをかけた形だ。

編機の販売台数が大幅減も、財務体質は安定

島精機製作所、 2020年3月期 財務数値一覧(表1)

島精機製作所、
2020年3月期 財務数値一覧(表1)

連結の売上高は332億600万円(35.3%減)と2ケタの減収だった。主力の「横編機」の販売が前期比41.0%減と大きく落ち込んだ。その影響で、売上高総利益率(粗利率)が35.0%(10.1ポイント減)と2ケタ減となった。販管費は、金額そのものは前期より減少しているが、売上額が減ったため比率が上昇した。

営業損益は、56億200万円の営業損失を計上するに至った。経常損失は55億8,300万円。当期損益は、特別損失──投資有価証券の評価損や繰延税金資産の取り崩しなどにより、当期損失84億2,700万円となった(表1を参照)。

島精機製作所、 2020年3月期 事業別売上高(表2)

島精機製作所、
2020年3月期 事業別売上高(表2)


事業セグメント別では、主力の「横編機」が売上高228億7,700万円(41.0%減)と大きく落ち込んだ。横編機の販売台数は、6,203台(1,747台減)。うち「ホールガーメント®」が1,026台(495台減)だった。中国やトルコ、バングラデシュ、イタリア、ベトナムなどの地域で、販売台数が伸び悩んだ。

直近の業績は、米中貿易摩擦や設備投資の抑制、コロナ禍による工場生産の休止などが影響し、大きく落ち込んでいる。しかし、財務状態は安定している。手元流動性資産は減少したものの潤沢で、同比率は売上高が減少したこともあり、8.8(2.8ポイント増)と改善している。有利子負債が81億1,200万円あるものの、手元流動性資産が約216億円で、実質は無借金経営である。当面の資金繰りについての心配はない。

終息後は「元に戻らず、新たな局面に」

“コロナ後”を見据え、サステナブルなどを意識した 新しいソリューション提案を視野に入れている (写真はオーダー・ニット・ファクトリー)

“コロナ後”を見据え、サステナブルなどを意識した
新しいソリューション提案を視野に入れている
(写真はオーダー・ニット・ファクトリー)

今期は急速に悪化した業績を踏まえ、計画する「設備投資額」を20億円(前期は38億円)と絞り込んでいる。しかし「研究・開発費」は36億7,000万円と前期と同じ規模を投入する計画だ。「コロナ禍で研究・開発部門に時間的な余裕ができ、新製品の開発が進んでいる。新しい提案のチャンスだと思う」(島三博 代表取締役社長)。

コロナウイルスの終息後は、「アパレル業界は元(の状態、価値観)に戻ることはないだろう。これを機に『変わるべきだ』と考えるアパレルのトップも多いと思う。今後はより“サステナブル”(な提案)へ舵を切っていけると考えている」(島社長)。「中期計画も根本的に見直さないといけない。社内の自動化を進め、浮いた人員を新規ビジネスへ振り分けることも視野に入れている」(同)。

通期の業績予測は、コロナウイルスの影響を考慮し、「未定」としている。第1四半期の業績報告の頃には、通期目標を公表できる見通しだ。                                 

(樋口尚平)

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