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メンズの尾上繊維、ロンナーの自社工場を譲り受け
旧従業員も再雇用

update: 2020/12/07

《企業レポート》

島原ソーイング(株) 下宮工場(外観)

島原ソーイング(株)
下宮工場(外観)

オーダースーツを手掛ける尾上繊維(大阪府吹田市)グループの島原ソーイング(長崎県島原市)がこのほど、ロンナーの自社工場である「九州ロンナークロージング」の事業及び「ロンナー」の商標権を譲り受け、11月16日から操業を開始した。高級スーツが強みのロンナーのノウハウが加わり、展開する商材の幅が広がる。

「ロンナー」ブランドの店舗展開も視野に

事の発端は、コロナ禍により業績が悪化したため、ロンナーが会社を解散する旨を決定した事。今年4月に解散を決めたが、自社工場の「九州ロンナークロージング」(長崎県島原市下宮町)の扱いがなかなか定まらなかった。熟練したスーツ職人がいたため、技術を継承する必要性からも譲渡先が求められていた。

「従業員の再雇用」と「技術の継承」が決め手となった。 ロンナーの柴田社長(左)と島原ソーイングの尾上社長

「従業員の再雇用」と「技術の継承」が決め手となった。
ロンナーの柴田社長(左)と島原ソーイングの尾上社長

それと前後して、尾上繊維が新しい工場を建設するという計画があった。既存の自社工場「島原ソーイング」(長崎県島原市大手原町)から徒歩数分という好立地に「九州ロンナークロージング」が位置していたこと、尾上繊維が手掛けていない高級ゾーンに強いロンナーの工場だったこと、また地元の島原市長の仲介もあり、今回の譲渡が実現した。

旧「九州ロンナークロージング」は島原ソーイング(株)下宮工場として改称し、再スタートを切った。約50人の旧ロンナーの従業員も再雇用した。島原ソーイングの尾上智昭 代表取締役はロンナーの自社工場について、「既存の工場があり、しかも縫える技術を持つ人がいるというのは願ったり叶ったりだった」と語り、高級スーツのノウハウを持っている点を評価した。「今まで我々が手掛けてこなかった高級ゾーンが強みのロンナー工場。非常に良い工場がグループに入ったと思う」(尾上社長)。

島原ソーイング(株)下宮工場の今後の役割は大きく3つ──①尾上繊維が手掛けるオーダースーツブランド「ダンカン」の高級ゾーンの供給、②旧ロンナーの取引先のオーダー、③「ロンナー」ブランドの店舗展開、である。

各メリットについて、①は「ダンカン」が価格志向ブランドであるため、新しいゾーンや価格帯を提供することができる。②は紳士服専門店などのオーダー需要を引き続きフォローする。③は「ロンナー」ブランドを屋号にしたショップを新たに展開する計画だ。

高級ゾーンを得意にした ロンナーのスーツ(同社の展示会より)

高級ゾーンを得意にした
ロンナーのスーツ(同社の展示会より)

スーツ離れが指摘されて久しいが、若い層──新規顧客の開拓を考えた時、自分だけのスーツが作れるオーダーは提案がしやすくなるメリットがある。「ロンナー」ショップでは既存に加えて、新たに若い世代のユーザーもターゲットにする考えだ。

ロンナーの柴田耕作 社長は「工場の従業員の雇用継続、技術の継承、を何とか守りたいと考えていた。この2点を実行してもらえる事が有り難い」と感想を述べた。島原ソーイング(株)下宮工場は、年内は試作品の製作や縫製工程の調整を進め、年明けの1月から本格稼働する計画。来年からは日産30着を目標にし、2年後の2023年には同50着の生産キャパシティーを目指す。

経営が行き詰った自社工場を継承するメリットには、熟練した職人による技術の継承、安定した既存の取引先などがある。縫製のほとんどが海外へ移管されてしまった現在、国内縫製は風前の灯。特に「ロンナー」や「リチャードジェームス」など定評のある高級スーツを手がけてきたロンナーの自社工場の生産機能を引き継ぐメリットは、大きいと言えるだろう。

(樋口尚平)

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