グンゼ、佐口社長──2023年 経営方針
「4つの基本方針において新しい価値を創造し、“ここちよさ”を提供する」
update: 2023/01/01
《企業レポート》
グンゼの佐口社敏康 代表取締役社長は、2023年の経営方針について昨年に引き続き、「4つの基本方針において新しい価値を創造し、“ここちよさ”を提供する」という課題を掲げた。①新たな価値の創出、②資本コスト重視の経営、③企業体質の進化、④環境に配慮した経営、という4本柱の強化・実現を目指す。アパレル事業では、レディスのフェムテック需要を取り込むほか、IoTやAI技術を活用して縫製工場の“スマートファクトリー”化を推し進める。
アパレルビジネスは通期で増収の見通し
通期(2022年度=2023年3月期)の業績は、増収増益で着地する見通しを立てている。収益の柱になってきた「機能ソリューション」事業において、プラスチック・エンプラ・メディカルの3分野が好調だったほか、「アパレル」事業も増収を達成する計画である。
世界規模のコスト増が影響し、アパレル事業の収益性が悪化したが、国内の店頭売上は回復基調にある。円安の逆風はあるが、レッグウエアが2ケタの増収で推移するなど、プラス要因も少なくない。しかしコロナ禍の影響からは完全に脱却できておらず、2019年の水準までには至っていない。
今年に強化するアパレル分野は、レディスのフェムテック関連商材だ。レディスインナーに占める売上比率が2021年度で17%にまで増加。2024年度にはその比率を25%まで高める計画だ。今期の売り上げも2ケタ増で推移している。無縫製仕様など、主に「キレイラボ」の商材をメーンに拡販を図る。
IoTを活用した取り組みにも挑戦
アパレル事業においてはそのほか、IoTを活用した取り組みにも挑戦する。現場の生産効率などの“見える化”を推進。製品の接着ラインや裁断工程を自動化するなど、生産現場における効率化を促進させる。ロスの軽減、効率化の向上などを進め、縫製工場の“スマートファクトリー”化の実現を目指す。
興味深い取り組みの1つが、オンライン中継技術を利用した工場見学の実施だ。ベトナムの現地工場「グンゼベトナム」のオンライン見学を、取引先を対象に計画している。同工場は1995年に設立。最も規模の大きい工場で、主にメンズ関連のインナーを生産する。レディスのショーツやキャミソール、子供のボクサーブリーフなども手掛けている。2020年に増設し、生地の編立から裁断、縫製、梱包まで、一貫した生産体制が整った。日本の工場と同等の自動裁断機を導入しているほか、編み工程で発生する繊維くず“綿塵”を減らす独自開発した機械も稼働中だ。オンラインで現地をつなぎ、リアルタイムで生産の工程を見学することができる。コロナ禍の影響が残る中で、取引先との交流を深める目的がある。
今年は新しい中期経営計画「VISION 2030 stage1」(V30-1)の2年目に該当する。今年の景気見通しについては「(コスト増など不確定要素が多く)判断が非常に難しい」(佐口社長)と語った。中計の数値目標の見直しについて聞かれた佐口社長は、「決断にはもう少し時間を掛けたい」と慎重な姿勢を示した。
(樋口尚平)