大阪・梅田 再開発事業「グランフロント大阪」商業棟
出店テナント266店舗を発表
ファッション関連は119店、“初”進出は19
update: 2013/01/17
三菱地所をはじめ12の企業が参画する大阪・梅田北ヤードの再開発事業「グランフロント大阪」の商業棟に出店する全266店舗の概要が明らかになった。1月16日、大阪市内で三菱地所と商業棟を運営する阪急電鉄がその詳細を発表した。グランドオープンは4月26日(金)。店舗面積は約44,000㎡で、初年度2,500万人の来場者、初年度売上高400億円(2014年3月末まで)を目指す。
フラッグシップも数多く展開
同事業は2006年のコンペで落札され、2010年3月から工事に着工した。約3年の工事期間を経て、今年4月にグランドオープンを迎える。再開発された7haの土地は元々、JR大阪駅の北側にある操車場だった。大規模な公園や競技場などを建設する案も取り沙汰されたが、結局、複合商業施設の開発という結論に落ち着いた。
「グランフロント大阪」は商業棟のほか、オフィスビルやホテル、分譲住宅など複数の施設で構成する。今回、発表されたのはJR大阪に隣接する南館と北館の下層階に入居する商業棟のテナントだ。南館と北館を併せて266店舗が出店する。約44,000㎡の店舗面積に266店舗が集積する。1店舗当たり165㎡、約50坪と一定の面積が確保できるため、新業態やフラッグシップに位置付けられる新規テナントの割合が多くなった。
南館、北館それぞれ地下2階・地上9階の構造。うち119店舗がファッション関連と全体の45%(17,500㎡)を占める。インテリア・生活雑貨が35店舗(13,000㎡)、飲食関連が77店舗(10,700㎡)、ビューティー&コスメ・サービスが35店舗(2,800㎡)。
メーンのファッション・衣料品関連では、関西・大阪・梅田初出店および新業態が77店舗。そのほか、「ロンハーマン」や「ユナイテッドアローズ」(「スティーブン・アラン」も出店)、「トゥモローランド」「ビームス」などフラッグシップショップの19業態が出店する。
インテリア・生活雑貨関連では、「ザラ・ホーム」が日本初出店。「無印良品」(約3,000㎡)、「アクタス」(約500㎡)、「ケユカ」(約1,400㎡)は西日本のフラッグシップを出店する。266店舗中最も広い店舗は紀伊國屋書店(約3,700㎡)。飲食関連では、カフェを20店舗(1,200席以上)設置し、時間消費型の商業施設を意識している。
ターゲット層はセレクトショップの愛好層
主要なターゲット層は特に設定していない。「好奇心旺盛で、こだわりの強い、ライフスタイル編集の達人」を対象顧客にする。具体的には30-40代のセレクトショップ愛好者層と考えられる。年齢や価格帯で区切れないと考えており、「あまり年齢で区切ると(コンセプトが)ぼやけてくる」(阪急電鉄、杉山健博・常務取締役不動産事業本部長)と判断したという。また飲食店舗では、「40-50代にも楽しんでもらえると思う」(同)と考えている。
周辺に林立する百貨店顧客は特に意識していない。「既存の商業施設との間で顧客を取り合うのではなく、梅田になかった施設を作り新しい顧客層を集める」(同)狙いがある。従って主要な顧客層は、感度の高いファッションや生活雑貨を求める30-50代の男女と考えられる。60代以上の百貨店顧客と20代以下は二次的な位置付けのようだ。
大阪・梅田地区は、三越伊勢丹の進出や阪急百貨店・大丸の建て替え・増床などにより、総売り場面積が東京・新宿のそれを上回るまでに拡大した。各方面からの指摘を待つまでもなく、明らかな過剰供給である。事実、梅田にある既存の商業施設から「グランフロント大阪」へ引っ越しするテナントもいくつか存在する。すでに人気テナントの取り合いが始まっている。
施設のコンセプトや狙いは「梅田になかった施設を作り新しい顧客層を集める」というものだが、パイの食い合いになることは避けられないだろう。第一商圏は関西一円、第二商圏は全国と広範からの集客を念頭に置いている。坪効率を考えると44,000㎡で400億円という年間目標は控えめだ。ターミナル立地では日本最大級の規模を誇る商業施設だが、顧客を獲得するという作業には時間がかかると見ているようだ。中期的な成長路線を描いているようで、「一からのスタートなので、息の長い顧客を獲得したい」(同)というコメントにその思いが表れている。
(ファッションライター 樋口尚平)