近鉄百貨店がマガシークと共同で
ファッション通販サイト「HARUKASTYLE」を立ち上げ
update: 2015/01/05
近鉄百貨店(大阪市)が2014年12月22日から、マガシーク(東京都)と共同でファッション通販サイト「HARUKASTYLE」(ハルカスタイル)を立ち上げた。いわゆる“O2O”(オンライン・トゥ・オフライン)体制を整える先行投資が主な目的。手薄だった30-40代女性顧客を開拓する狙いもある。
新規顧客層を開拓する
現在、グループ会社の近鉄リテールサービスが伊藤忠商事と共同で近鉄沿線の駅構内にコンビニエンスストア「ファミリーマート」を展開している。マガシークは伊藤忠商事のグループ会社の1つ。同社のグループ会社のビジネスが縁になり、今回の協業が実現した。
近鉄百貨店は1999年から自社のECサイトを運営していたが、2013年6月に現在の「あべのハルカス」近鉄本店の一部を構成するタワー館が完成したタイミングで、新たにデジタルメディア事業部を開設。「HARUKASTYLE」( http://www.harukastyle.jp )の立ち上げに取り掛かった。準備期間は半年足らずと短い期間だったが、ファッション系ブランドを約350ブランド、3万8,000品目の取り扱い商材のECサイトを開設するに至った。
同サイトは立ち上げから1週間で取り扱いブランド数が400に増えた。近鉄百貨店に出店するブランドも100ほど出店しているが、大半は非出店ブランドで構成。今後も増やす予定で、当面は600ブランドをめどにしている。既存の来店客を囲い込む一方で、新ブランドによる新規客の開拓も期待できる。グループ共通の「キップス」カード(会員数130万人)を使用することができ、この面からも新規顧客の開拓が期待できる。
中期的観点からの先行投資
今回、自社の新しいサイトを立ち上げた目的は、いわゆる“O2O”(オンライン・トゥ・オフライン)体制を整えるためで、先行投資の一面もある。もちろん、年配層が主体の店頭顧客において、手薄だった30-40代女性顧客を開拓する狙いも重要だ。近鉄百貨店の坂本雅哉 本店デジタルメディア事業部長は、「大手SPAや専門店などのECビジネスの売り上げが増えている一方、ECサイトがリアル店舗を出店するなどO2Oの事例が増えている。ECサイト立ち上げにより店頭の活性化にもつながるし、O2Oビジネスの環境整備も進めることができる」と説明する。
立ち上げから1年間の取扱高目標は3億円、会員数は2万人を計画。立ち上げから1週間の会員構成は、75%が女性で、その75%が30-40代だという。当初の想定通りの客層を取り込めている。5年後には10億円規模を計画する。約5億円強の売上規模がある既存のECサイト(お中元やお歳暮などがメーン)も10億円規模に拡大する計画だ。
O2Oの体制整備には、効率的な在庫の管理・消化を追求する目的もある。現在、「ハルカスタイル」と店頭の在庫は別々に管理しているが、将来的には共有管理することも視野に入れる。店頭との相乗効果にも期待を寄せる。「リアル店舗へ行く前にECサイトで下調べする、あるいはその逆の利用方法も増えると思う」(坂本事業部長)。セールやイベント情報など、リアル店舗の運営と連動することも考えている。
今後は30-40代のほか、女性を中心とした50代以上の顧客へもEC利用を広げていく。「サイトへの訪問者数は比較的、順調だが、認知度を高める必要がある」(坂本事業部長)。
(樋口尚平)