オンワードホールディングス、オンワードデジタルラボ
工場と直結──協業ブランドを開発・販売する「CRAHUG(クラハグ)」プロジェクトを立ち上げ
update: 2021/08/24
《企業レポート》
オンワードホールディングスの子会社、オンワードデジタルラボ(東京)が8月31日から、全国の工場と直結した協業ブランドを開発・販売する「CRAHUG(クラハグ)」プロジェクトを立ち上げる。個性のある製品を生産する工場のブランド開発に協力するほか、自社ECサイト「オンワード・クローゼット」でも販売する。日本の“ものづくり”を再興する「D2C」サポートプロジェクトだ。
ファクトリーブランドの確立を目指す
同プロジェクトを企画した背景には、コロナ禍で日本の製造業や工場が疲弊している事情があった。オンワードの企画力やマーケティング力、販売力を活かし、こうした産地の工場をサポートして、製品のブランド力を向上・確立する狙いがある。
プロジェクト名の「CRAHUG(クラハグ)」は、CRAFTMAN=クラフトマン(職人)とHUG=ハグ(ふれあう)という2つの言葉を使った造語。クリエーティブ・ディレクターは、テキスタイル開発の経験が豊富な梶原加奈子・KAJIHARA DESIGN STUDIO代表を起用した。
「クラハグ」が実施する事は大きく5つ。①販売支援、②ブランディング支援、③プレス発信、④イベント開催、⑤WEB解析、だ。全国のファクトリーブランドを選んで、ECを通じた販売を行う。また、工場のブランド構築に参画し、企画の支援を行う。情報発信はウェブサイトやSNSを活用して、新しいブランドを紹介するほか、定期的にポップアップショップなど実店舗の運営も手掛ける計画だ。工場見学ツアーの構想もある。
工場の選定基準は、まず①商品ラインナップ、②工場の持つ技術や伝統、③環境や社会に配慮した側面を持っているか──などを総合的に判断し、「CRAHUG」チーム内で検討する。チームスタッフが工場と直接、話し合いを実施。前述の5つの支援を通じて、独自の工場ブランドの確立を目指す。オンワードは、サポート・フィーの収入や幅広い個性的なブランドが扱えるというメリットがある。工場側は無名のブランドをエンドユーザーに出来るほか、新規顧客の開拓が効率的に行える利点がある。
認知度アップを最優先
「クラハグ」で取り扱う商材は大きく4つの分野――「ファッション&テキスタイル」「リビング&キッチン」「ビューティー&ヘルス」「アウトドア&ガーデン」。ファッションやアパレル分野に限定せず、ライフスタイルを意識して幅広い商材を扱う。
プロジェクトの梶原加奈子クリエーティブ・ディレクターはオンライン会見において、「コロナ禍もあり、産地から売り込みをする動きが見られるようになっていたが、それをサポートしたいと考えていた。異なる分野の人との交流が、新しいブレークスルーを生み出すと考えている」と期待を語った。また、オンワードホールディングスの保元道宣 代表取締役社長は、「産地の皆さんと一緒に(ファクトリーブランドを)作っていければと考えている」と抱負を述べた。
スタート時は、12の工場が企画する13のブランド、計183商品を自社EC「オンワード・クローゼット」で販売する。ゆくゆくは50-60工場の商品を取り扱う計画だ。当面は前述の4分野の商品を展開するが、推移を見ながら変更や追加も考えている。現状ではコスメ、器、タオル、アウトドア関連の商品を重点強化する構えだ。当初は自社EC経由の販売だが、工場側が直接エンドユーザーに販売するケースも考えている。
「クラハグ」の中期的な売り上げの社内目標は設定しているが、非公開。「まずは『クラハグ』の認知を上げる事を最優する」(酒見ひばり 「クラハグ」プロジェクトリーダー)方針。来春をめどに、越境ECサイトへの出品も検討している。
(樋口尚平)