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「ルクア大阪」を運営するJR西日本SC開発株式会社
代表取締役社長 山口正人氏に聞く── 安定した人気の秘密とは?

update: 2014/10/21

JR西日本SC開発、山口正人社長

JR西日本SC開発、山口正人社長

2011年5月4日にグランドオープンした「ルクア大阪」。大阪・梅田のJR大阪駅ビル「大阪ステーションシティ」の「ノースゲートビルディング」東側の区画に入居する地下2階、地上10階のファッションビルである。今年8月28日には開業以来、最大規模の改装を実施した。来春には旧・JR大阪三越伊勢丹を居抜き改装して、「西館」がオープンする。実効売り場面積が2万㎡というコンパクトな規模の現・ルクア(来春から東館に名称変更)。競合ひしめく梅田商圏の中で、キャリア層を中心に幅広いエンドユーザーを呼び込んでいる。安定した人気の秘密は何か? 同施設を管理・運営するJR西日本SC開発株式会社の山口正人代表取締役社長に話を聞いた。

幅広いユーザーを引き付ける3つの強み

JR大阪駅ビルの再開発で新たにオープンした「ルクア大阪」。初年度は11カ月という短い期間だったが、340億円と当初目標を大幅に上回る売り上げを達成した。2年目は357億円と続伸。3年目は「グランフロント大阪」の開業と重なったこともあり346億円と勢いは落ち着いたが、4年目の今期は2年目の売り上げをクリアするべく、堅調な推移を続けている。

昨年6月、社長に就任した山口正人氏は、開業の1年前からこの事業に携わってきた。MD(マーチャンダイジング)の組み立てから開業後の推移までつぶさに見てきた、現場をよく知る人物である。その山口社長は「ルクア大阪」の人気の秘密について、3つのポイントを挙げる。

「いわゆるSC(ショッピングセンター)世代と言われる25-30代のトレンドに敏感な女性を中心とした人たちの共感をうまく得られたと思います。価値のあるものに相応のお金を払うというエンドユーザーが当館へ集まってくれている。梅田地区の中でも相当ユニークな客層ではないでしょうか。周辺にも似たような施設はあまりないと思います」

見通しを良くしたフロア構造

見通しを良くしたフロア構造

「顧客に支持されている理由の1つは、買い回りしやすいよう各フロアの見通しが利くような構造にあると思います。気が付いたらあまり抵抗感なく、上層階へも上がれるようになっている。その効果でしょうか、上層階の坪効率もあまり落ちません。買い回ってもあまり疲れない構造だと思います。今年8月のリニューアルに際し、顧客にインタビューしたところ、20-30代のメーンターゲットは意外に『時間がない』という回答が多かった。(買い回りの効率を重視して)館の滞在時間を長くしようと考えない方がいいのではと感じました」

「2つ目には、館の運営でかなり特徴的なことをやっている点。シーズンごとにテーマを決めて、可能な限りそれに沿って販売してくださいと各テナントに頼んでいます。最初は『そんなことにまで口を出すのか』と言われたようですが、売上増という成果が出るに連れ、この方針はテナントの間に浸透していきました。現在、ポイントカード会員数は27万5,000人ですが、イベントを実施した時の反応がとてもいい。ロイヤルティーの高い顧客をテナント皆で集められている。テナントの方々とは『これは共通の財産だ』と話しています」

「3つ目はやはり立地に優れていること。『大阪に出店するのであれば、ルクア』だと言ってくださる専門店も多い。昨年は確かに『グランフロント大阪』の開業景気の影響はあったと思います。しかし昨年11月ごろからは落ち着きを見せ、そのころから前年並みの数字が出るようになっていった。『グランフロント大阪』の開業にはプラスとマイナス両面があるので、一概にすべてがマイナスだったとは言えません」

今夏の改装で客層の幅が広がる

8月の改装で新規出店した 「フリークスストア」。 メンズとレディスを別のフロアで展開する

8月の改装で新規出店した
「フリークスストア」。
メンズとレディスを別のフロアで展開する

8月28日に全テナントのおよそ30%を入れ替えあるいはリニューアルした改装オープン後は、2ケタ増と好調な推移だ。今回の改装では、20代前半の女性を意識した内容にMDを改めた。

「リニューアルの比率が全館の約30%になったのは結果論だと思います。先に何店舗をリニューアルするか、という話ありきではありません。今回の58店舗は新規と既存店のリニューアルと両方ありました。最初から入れ替わっていただくことが前提ではありません。むしろ、開業からなじんでもらっているテナントの方が、デベロッパーとしてはやりやすい。しかし残念ながら、ファッションにはトレンドの変化がありますので、若干の入れ替えはこれからもあるでしょう」

今回のリニューアルでは、非アパレル系テナントも重点的に強化した。開業当初からのカップル客を狙った同一ブランドによるメンズ・レディス両方のショップを展開するケースも増やしている。

「開業から3年が経過していることもあり、リニューアルはルクアの現状──想定の来館客と実勢との乖離があるのか──を検証するタイミングでもありました。その結果、子連れのバギー客が多かったほか、大学生が増えていることが分かりました。特に就活生で、彼らが増えると新入社員もおのずと増えます。当館のターゲット層の“入口世代”に該当しますが、そこに合わせたMDを入れていけば、新規客獲得につながります」

「西館」とは補完関係に

キャンディーストア「パパブブレ」。非アパレル系も導入した

キャンディーストア「パパブブレ」。非アパレル系も導入した

来春に予定されている「ルクア西館」の開発は、同社が担当する。旧・JR大阪三越伊勢丹の館、3万3,000㎡のスペースにおいて、百貨店の強みと専門店の強みが両立した売り場を構築しようとしている。東館の好調を維持しつつ、西館では新しいMDを編集し、両館で補完関係を築こうとしている。

「キーテナントは百貨店=三越伊勢丹。フロアの構成比率は40%が百貨店部分、60%が専門店部分です。まず、百貨店が強いと思われるものを切り出して、導入する。さらに専門店が強みを発揮できる分野を加えて、互いの良さを出そうと考えています。西館では東館の卒業世代を取り込んでいきたい」

過剰供給ではないかという向きもあるが、山口社長はむしろ展開面積が不足していると考えていた。2館体制で幅広い年齢層を取り込み、「ルクア」の顧客を開拓していくという中期的な戦略が垣間見える。

「実はルクア大阪の開業を間近に控えた当時、個人的には2万㎡はやや手狭ではと感じていました。三越伊勢丹は5万㎡で、百貨店としてはこちらも規模が小さいと感じました。今回は東館と西館を併せて、5万3,000㎡に拡大する。新生『ルクア』として十分な提案ができると思う。両館のトータルで年間800億円の売り上げを計画しています」

(樋口尚平)

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