オムニチャネル時代を迎えるジーンズ&カジュアル専門店
update: 2014/02/14
このところ安倍政権の政策もあってか、日本経済には株価の上昇や雇用の改善など明るい材料も見えている。資産価値の上昇を追い風に、ぜいたく品の小売業績が伸びている。しかし一般衣料、カジュアル系業界の景況は決して良くはない。 そんな中、最近小売流通の「オム二チャネル化」を予想する意見が活発になってきた。今後はスマートフォンやSNS(ソーシャルネットワーク)を駆使した消費活動に置き換わるという革新的な動きの予想だ。
「オムニチャネル」とはなにか
「オムニチャネル」とは消費者がどの流通(パソコンやTVショップ、実店舗など)で買ったのかという意識を持たない、新しい買物スタイル全体を指す用語である。「オムニ」とは「すべてをカバーする」といった意味の英語である。O2O(オー・ツー・オー=Online to Offline)と呼ばれるネットから実店舗へ客を送り込活動もその一環である。従来実店舗以外での小売は「無店舗販売」などと呼ばれて、小売業界とは別の、一種「敵対」する存在として意識されていた。そうではなくて自社の運営するWEBサイト、モバイル情報などを統合して、自社全体の売り上げを獲得するという大きな経営戦略の一環である。実店舗とEC(eコマース)をまたいでの顧客管理や在庫状況の把握、配送ルートの整備などを行い、顧客との接点を増やすことで、いつでもどこでも買物ができる環境を作りだす。各店員にはモバイル機器が配布されており、顧客の目の前で商品詳細やライバル店の価格を調べたり、他の店の在庫の有無をチェックし、また決済もできるようにしている。販売機会を逃すことが少ないしくみだ。自分の店の実績だけを優先という狭い発想ではない方向転換の時期に入ると言われている。カタログをみて興味を持った消費者がSNSで評判を聞いたり、実際に店で触ったりしたあと、実際の注文はメールで行うなどの例である。好みの色やサイズが店頭になかった場合、店で他店から自宅への直接配送とか、いったん自宅でじっくり考えたうえでスマートフォンなどで注文するなど、そのやり方はさまざまである。登録会員としてのポイントを稼ぐことも忘れないしたたかさも実現できる。
客数減少への対策としての「オムニ」戦略
このトータルな戦略はアメリカの百貨店名、メイシーズが始めたとされ、日本ではイオングループが開発を始めている。実はカジュアルSPAの「ポイント」社でも若い女性を狙ってこの戦術に近い動きを初めている。同社によると、スマートフォンでコーディネーションの画像や動画を配信し、150万人の会員のアクセスがあるという。その効果はモバイル経由などの受注では40%以上の伸び、全社での比率は8%から10%へと増加しているという。来客数の伸びに悩むジーンズ系専門店などの次の一手として注目されることになりそうだ。
(甲賀 一郎)