国際アパレル機器&繊維産業見本市「JIAM2022 OSAKA」を6年ぶりに開催
update: 2022/12/05
《展示会レポート》
一般社団法人「日本縫製機械工業会」(JASMA)が主催する国際アパレル機器&繊維産業見本市「JIAM 2022 OSAKA」が11月30日から12月3日の4日間、大阪のインテックス大阪で開催された。本来は2020年に開催予定だったが、コロナ禍の影響で延期されていた。国内外の関連企業およそ140社が出展した。
テーマは「JIAMから、つながる...~次世代技術と匠の技のコラボレーション~」
コロナ禍の影響で2020年の予定が延期されており、前回から実に6年ぶりの開催となった(前回は2016年4月の開催)。当初は国外を中心に来場者が集まるかどうか懸念される向きもあった。実際、前回に比べ来場者数は減少傾向だったが、久しぶりのリアル展示会ということもあり、一定の成果は得られたようだ。以下に、主要各社の主な出展内容、製品をレポートする(順不同)。
島精機製作所は全面リニューアルした自動裁断機「P-CAMR」を新たに提案した。開拓の余地がある国外市場のシェア拡大を目指し、刷新した。機能面では、生地を裁断する際の“歪み”を制御するセンサーの精度アップを図った。重ねた生地を裁断した時の誤差を1mm以下に抑える。
また、裁断機を移動させる機構の強度も向上させた。従来はゴム製のベルトを採用していたが、金属製のラックとピニオン構造で耐久性が高まっている。目打ち機を独立させて、裁断と目打ち作業が同時にできるようにしたことで、さらに効率性が向上した。ターボフロアの省エネ化、バイオビニールなどの採用など、環境に配慮した取り組みも強化している。
1992年に発売した「P-CAM」シリーズだが、初めての大幅刷新となる。来場社の反応は上々だそうで、2023年秋以降に販売を開始する計画だ。国内にとどまらず、国外市場も視野に入れている。
JUKIは「CONNECT with JUKI」がテーマ。川上から川下までを一気通貫でフォローできるような提案を強化している。製品ごとにコーナーを設け、各機器の展示を実施した。「少量生産の最適化、大量生産の効率化、事業領域の拡大」をポイントに掲げた。簡易の縫製ラインをブース内に再現。縫製から検針、箱詰めまで自動化された工程を分かりやすく提案した。
ペガサスミシン製造は3つの新機種を提案した。ハイエンドモデルの「WX600P」は偏平縫いミシンで、使いやすさを追求している。「MXTneo」はオーバーロックミシンで、ネジレやズレを防止し、曲線など難しい形状の生地も安定して縫える機能を強化した。シリンダーヘッド型オーバーロックミシンの「MXneo」でも使いやすさを向上させている。「EXneo」はロングセラー機をブラッシュアップした製品だ。
ヤマトミシン製造は、「工程の効率化、コストダウンにより収益性を高める」取り組みに重点を置いた。ボトルネックの工程を改善することで、縫製ライン全体の効率を高めるという発想だ。丸物のボトムヘム縫いにおいて脱技能化した機器や、袖口のヘム縫いを自動化した製品などを出展した。新製品はフラットシーマ・マシンのFD-62SD-LF-01MR/AC2。生地への針のダメージを軽減したことで、仕上がりがよりきれいになった。増加するアスレジャー需要も背景にあるようだ。
ブラザー工業はアパレル、ノンアパレル、ボンディングなどカテゴリーごとに製品提案を実施した。アパレル分野では、縫製のスピードを上げても溶融せずに縫える「KE-430HX」などを提案した。同社も他社の傾向と同じく、工程全体の最適化を目指した提案に力を入れた。「ロールtoロール」という新しい提案では、カーシートの生産であらかじめ縫製した後に生地を裁断する自動の工程を披露した。実用化はこれからだが、来場社の反応を見る目的があった。
自動化による効率性アップ、環境配慮が共通した課題に
出展した各企業の提案内容からうかがえるのは、縫製の現場では、自動化による効率性アップ、環境配慮が共通した課題になっていることだ。熟練工の人数が少ない工場でも、品質が安定したアパレル品を効率良く生産できるような機器やソフトの開発に力が入れられている。
加えて、生産の工程を簡略化し全体の生産性を高めようとする試みも見受けられた。複数企業が協業し、物流まで守備範囲を広げて生産システムそのものを提案するケースもあった。縫製機械メーカーが従来の範疇を拡大し、生産現場をトータルでコーディネートする傾向がより強くなっている。
(樋口尚平)