JR大阪駅構内“駅ナカ”商業施設「EKI MARCHE OSAKA」
開業から3カ月、女性客取り込む
update: 2013/02/12
JR大阪駅構内に昨年10月31日オープンした商業施設「EKI MARCHE OSAKA」(エキマルシェ大阪)。JR西日本エリアでは最大規模の“駅ナカ”商業施設だ。日本初や関西初の飲食店舗を軸に、カジュアルファッションや雑貨ブランドなど82店を集積した。「大人のみちくさ」をコンセプトに「ちょっとおしゃれな日常」を提供する狙いがある。
グループ内で住み分け、役割分担
「エキマルシェ大阪」は元々、アウトドアやファッションブランドを中心にした商業施設「ギャレ大阪」があった場所を改装してオープンした。施設の上には線路が走り、一部出入り口は改札とつながっている。出店のきっかけは大阪駅の再開発事業。駅の北側に開業した百貨店のJR三越伊勢丹やファッション商業施設の「ルクア」と住み分けを図るため、競合せず補完できる商材を突き詰めた結果、飲食店を中心とした駅ナカ施設に落ち着いた。現在、旧ギャレ大阪の一部店舗はアウトドアブランドを中心に、通りを1本隔てた西側の高架下区画に「アルビ大阪」(ジェイアール西日本クリエイトが運営)と名前を替えて営業を続けている。
数年来、大阪駅を中心に梅田地区では大規模な商業施設の再開発が続いている。三越伊勢丹やルクア、アルビ、エキマルシェ大阪などのJRグループ、阪急百貨店や阪神百貨店、ヘップナビオなどの阪急電鉄グループ、大丸梅田店のJ.フロントリテイリンググループによる三つ巴の顧客獲得競争の様相を呈している。今年4月26日に大阪駅北側へ新たに開業する「グランフロント大阪」は三菱地所を筆頭に12企業が参画する複数企業による共同開発事業だが、下層階の商業棟の運営は阪急電鉄が担う。春以降はさらに物販施設が増加する。
「エキマルシェ大阪」のターゲット層は、平日に大阪駅を利用する乗降客に加え、土日・祝日に大阪駅周辺を回遊するエンドユーザー。“ハレ”の日のファッションや飲食、ヤング・カジュアルファッション、生活雑貨などは周辺施設に任せて、毎日気軽に利用できる利便性を重視した。「大人のみちくさ」と銘打ったのはそのためで、しかし大人のお眼鏡にかなうような「おしゃれな」店舗を意識して売り場を構築した。
同施設を管理・運営するジェイアール西日本デイリーサービスネットの取締役カンパニー開発部長で、エキマルシェ大阪の館長を務める石田宏輝氏は「『女性2人で過ごせる場所が欲しい』『気軽に食べられるところが欲しい』という駅の利用客の声が多かった。“食”がキーワードとして浮上してきた。間違いなくニーズがあると感じました。雑貨も必要だと判断しました」と館のコンセプトを説明する。「周辺の百貨店や大きな商業施設と競争・競合するのではなく、住み分けることが目的です。今春開業する『グランフロント大阪』は脅威と考えていません」(石田館長)。
売上推移はほぼ計画通り
店舗面積は4,500㎡。飲食やカフェ(42店)、化粧品や服飾雑貨(12)など59店舗、ファッション関連店舗23店の計82店で構成する。ファッションの区画(23店)は「アルビ」の名称でジェイアール西日本クリエイトが運営する。「ファッションが得意な『アルビ』と分業しようという発想です」(石田館長)。
開業後3カ月の推移は対予算比でほぼ計画通り。年内は103%だった。年明けは冷え込みなども影響しやや下回っているが、春商戦へ向け、各種イベントを起爆剤に集客を図る。エキマルシェ大阪のオリジナル販促も実施する。好調テナントは、関西初出店の「牛たん炭焼 利久」や「だし茶漬け えん」「野菜を食べるカレー camp(キャンプ)」「かにチャーハンの店」など。関西初や個性派店舗が人気だ。雑貨関連では、「ココシュカ」「アピヴィータ」「フクスケ トランジット」などが好調だという。
イメージターゲットはOLやキャリアなど若い年代の女性で、実勢も利用客の約70%が女性。平日の昼間や週末は年齢層の幅が広がる。特に飲食関連でその傾向が強い。従って今後、取り込んでいく客層は男性層だ。「昼の時間帯にビジネスパーソンが少ないことが課題。女性客は多いが、男性客も取り込んでいきたいと思います」(石田館長)。飲食がメーンのため、キャッチ率は55%と高いが客単価は低め。今後は回転率を高めていく必要がある。
初年度売上高目標は70億円。「JR西日本が展開する“駅ナカ”事業の雛形として、重要な物件です。この経験を今後どう生かしていくかがポイントでしょう」(石田館長)と話す。
(ファッションライター 樋口尚平)