リファッション2017
新たな豊かさを求め、これからのファッションを考える
update: 2017/07/13
ファッションビジネス学会(FB学会)リファッション2017実行委員会の主催による「リファッション2017 リファッション4.0を考える~新たな豊かさを求めて~」が7/8(土)東京渋谷・文化学園で開催された。
開催にあたり、木田 豊 実行委員長より、4つの研究会共催によるこのシンポジウムは、来年は10回目の節目を迎えること。今まで考えて来た「サスティナブル」「エシカル」「オーガニック」「フェアトレード」など、持続再生型のファッションから更に未来を見据えた「リファッション4.0」をテーマに取り組んだことが述べられ、シンポジウムに入った。
基調講演には、車いすユーザー(チェアウォーカー)でありながら現役レーシングドライバーである長屋宏和さんが登壇。福永成明事務局長との対談形式で、12年前に自身が立ち上げたファッションブランド「ピロレーシング」のことや服作りについて語った。
長屋さんは02年に鈴鹿サーキットで行われたF1日本グランプリ前座レースで大クラッシュをおこし、頚椎を損傷。チェアウォーカーになった。チェアウォーカーの場合、常に座った姿勢であることから服選びに制限されることが多く、着たい服があるのに着られないことに悩んだ。特に穿きたかったジーンズはお尻部分の縫い目が固くて着られない。そこで服のリフォーム会社を経営していた母親に頼み、ジーンズを作ってもらった。
しかし出来上がったものは「ジーンズではなくてデニムのズボンだったのです」とがっかり。特徴的な5ポケットなどのいわゆるジーンズのデザインになるように作り直してもらい、気に入るものが完成。それを見て「僕以外にも欲しいと思う人がいるはずだ」と感じ、ファッションブランドを立ち上げた。
製品化するにあたって、ジーンズの聖地である岡山県の児島にも行ったがその時は門前払いだったが、熱心に掛け合った末、長尾さんが考えたチェアウォーカーでも健常者でも穿けるジーンズが出来上がった。講演当時に着用していたジーンズは第1号の製品で、10年以上穿き続けているお気に入りだ。
現在、ピロレーシングの服はネットを中心に販売。実店舗での展開には苦労しているとのこと。
「扱っている商品がバリアフリーでも、店舗がバリアフリーでないと買いに行けなかったり、健常者でも着用できるものになっているのに、売り場で理解されなかったり、悔しい思いがあります」と長屋さん。
ファッション以外にも今後は「車いすで富士登山にチャレンジしたい」と、車いすであっても色んな分野で活躍されるであろう。
この他にもハマナカ株式会社の濱中知子代表取締役社長による、ハマナカが現在掲げている「手芸を通じて創造するよろこびを一人でも多くの方々に提供し、社会貢献すること」という企業理念の意味やどんな展開をしているかを講演。昨年に続き、今年度ホームソーイング全国小・中・高作品コンクールのリクチュール賞を受賞した和田茉里奈さん(美濃加茂市立東中学校)のインタビュー、大麻博物館の高安淳一館長が講演を行った。最後は日本環境設計株式会社の岩元美智彦代表取締役社長のファッションにおいて同社が行っているプロジェクトやリサイクルについて発表され、今回は終了となった。
エコやリサイクルの点では、古着回収システムの浸透を見るとファッションでは定着してきている傾向を感じるが、更にサスティナブルやエシカルな観点、さらにはフェアトレードなような社会的な点でみると、まだまだファッションでやれることはあると感じる。また、今回の基調講演を行った長屋さんの様に、障がい者と健常者が分け隔てなくファッションを楽しめるようなことも考えていかなくてはならない。
ここのところ悲観的な印象を持たれているファッション業界であるが、今は幅広い視野を持って考えを深め、変革していくときなのかもしれない。
(ファッションライター 苫米地香織)