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ジーンズレポート
今こそジーンズ消費に新しい付加価値の観点を

update: 2014/07/08

甲賀 一郎

■エドウインの体制刷新と業界の今後

2012年の8月に端を発したエドウインの財務事故問題にようやく結論が出たようだ。本業とは別の財テク証券投資運用の失敗による百億円単位の欠損を伊藤忠商事が担保する形でのADR(法廷外紛争処理)が決定し、2014年7月からは伊藤忠から派遣された人材が経営トップとして機能する。本業としてのジーンズアパレルは順調であり、その部分の利益体質も健全である。仕入先も売先である専門店、デパートなどからも従来通りの取引の継続を切望する声が多かっただけに業界としては安堵しているというのが実態のようだ。

エドウイン社の国内工場の技術や生産効率レベルの高さには定評があり、「ジャパン・ジーンズ」の製造技術や開発力は我が国の業界にとっても大きな支えになっている。またヨーロッパに800店以上のジーンズ小売店のネットワークを保有するなど、国際化を大きな課題とする業界の模範的な存在でもある。今後は伊藤忠の持つ国際的な商圏メリットなどをバックにさらに大きな発展をとげることを期待したい。
 このところ、かつて隆盛したジーンズメーカーの挫折のニュースが多かった。草分けメーカーの「ボブソン」社(岡山)は2009年に一旦経営コンサルタント企業「マイルストーン ターンアラウンド マネジメント(株)」に譲渡されたが、2012年には創業者一族の尾崎博志氏が買い戻す形での再スタートをしている。また国産初のジーンズメーカー「ビッグジョン」社(倉敷市児島)も、2013年3月に地元銀行などからなる官民ファンドの支援でこれまた再出発を行っている。
 NBジーンズメーカーの低迷は、売り先であるジーンズ専門チェーンの寡占化による圧力やPB強化、また返品リスクなど取引条件の熾烈な「競争原理」が背景にあったことは事実だが、ジーンズカジュアル市場全体が伸び悩みか、むしろ収縮傾向であったことがその底流にある。(図表1)日本のジーンズ需要量は2007年のピークの後は、下降傾向が続き、現在ではそのピーク時の20%以上の減少となっていると推定される。今後は消費トレンドの変化に適合する商品企画を徹底して市場全体を活性化させる必要があるといえる。

■日本のジーンズ需要は「ファッション」性を重視

図表(2)と(3)で日本のジーンズの数量や価格について観察している。ヨーロッパで最もジーンズの需要量が多いのはドイツである。東西ドイツの人口は約8千万人、人口一人当たりの需要量も1.03着と、英国と並んで優位にある。一方フランスやイタリアは意外にも一人あたりの需要量は少ないようだ。ドイツとイタリアの一人あたりの需要着数には約3割ものギャップがある。
 図表(3)でジーンズの平均的な小売価格を示した。なんといっても日本のジーンズの平均価格の高さと、アメリカの低さが際立っている。総括的に見ると、ジーンズに実用性を求める国は価格も低く、結果的に人口「一人あたりの」需要量も多いということがいえる。

日本は明らかにジーンズをファッション的要素の多い衣服としてとらえていることが、これらのアンケートや統計からも裏付けられる。アメリカ並みの普及(1.8着)は遠い夢として、さて置き、当面はヨーロッパ並みの一人平均1.0着を達成することを目指したい。「実用性、安さ」よりは「ファッション&機能」にウエイトを置いた開発要素が必要なことは間違いない。

■「ストレッチ」で始まった新たな開発要素

現在、日本で販売されているジーンズに使用されているデニムのかなりの部分はポリウレタン系弾性繊維を使用した「ファッション的ストレッチ」機能の商品だ。国内のデニムジーンズのストレッチ比率はメンズで5割弱、レディスで8割強、男女平均して6~7割と見られる。
 ストレッチジーンズが愛用されるのは、肌にやさしく着心地に優れているということ、「脚長」など他人に「スマートに見見せたいという願望を果せることが大きな理由だ。
 デニムの伝統的な「頑丈さ」や「厚み」といった性質に、技術開発によって新たな可能性が加わったために新天地が広がったといえる。

ならば、さらに次の新しい可能性を求めて開発を進めることが必要になる。新たな要素としては、消費者の多様化する願望に応えるべく差別化された「カスタマイゼーション」の個人的なこだわりの要素、自然環境や資源などの「サステイナビリティ」(持続可能性)などへの社会的な要望、そしてやはり大切な、防寒、吸汗など身体の快適性へのニーズなどだとされている。

■日本をデニムやジーンズ開発のセンターに

世界からの「ジャパン・ジーンズ」に対する評価は高い。だが、その評価に見合うほどの売り上げ拡大効果は実現できていない。国内での製造コストが世界の市場から見て割高なこと、ブランド政策や販売マーケティング手法に習熟していないことなどが理由とされる。

しかし手をこまねいているわけではない、日本のアパレル業界全体としても国内外に「ジャパン・メイド」の良さをアピールする運動が本格化している。繊維業界団体の上部組織である「日本ファッション産業協議会」(JFIC)では経済産業省のリードのもとで、日本製素材やアパレル製品の「純正」の証明や、世界への本格的な宣伝活動に乗り出す。図表(4)が計画されている認定や認証の構想の概要である。日本を糸や織物、ニットなどの開発母体とすること、中国など途上国へ転出した生産現場がさらに減少する傾向への歯止めをかけて、産地を守ることもその政策の狙いだ。独自のラベルやシンボルマークも検討中と聞く。

日本国産のデニム生地には定評があるし、ジーンズの日本国内での縫製比率は他のアパレル製品に比べてまだまだ高い。ジーンズ業界もこの政府指導の「ジャパン・メイド」政策にそって、固有のブランド力に加えて「純正ジャパンメイド」のジーンズのキャンペーンを行うことは有効な手立てになる。 また今後は、諸外国に比べて「ファッション」要素や「機能要素」の発掘に優れている日本の市場性のメリットを大いに活用することが業界の活性化につながるだろう。

(JCR2014ダイジェスト)

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