大阪・梅田の「エスト」
フードホールでファッションゾーンの活性化を狙う
update: 2020/02/20
《店頭レポート》
大阪・梅田の商業施設「エスト」が2月19日、客層の拡大や来店頻度の増加を狙い、新しい区画「エスト フードホール」をオープンした。既存のファッションゾーンの活性化を目指す。施設全体の約4分の1に該当するスペースを活用する。
周辺のOL・キャリア層を取り込む
今回、「エスト フードホール」が開業した区画は同施設の一番、東側に当たるゾーンで、以前は渋谷109系のファッションブランドが集積していた。トレンドの変化で売り上げが伸び悩んでいたほか、既存の飲食店が好調を持続していることもあり、新しい集客装置として「フードホール」の開発を決定した。
約340坪のスペースに全国初の6店、大阪初の3店を含む計16店舗が出店した。中央付近に共用のテーブルとイスを設け、ショッピングモールにあるフードコートの体裁を採り入れた。カフェやランチ、飲酒を伴う晩御飯の需要を想定し、一日中利用できる内容にした。
主要顧客である20-30代女性のライフスタイルを考慮し、1人でもグループでも気軽に利用できる環境を整えた。また、新業態を導入することで、新しいメニューやサービスを提供することも意識した。
既存のアパレルビジネスへの相乗効果も
今回の「フードホール」の導入は、梅田商圏全体で見られる傾向だ。服が売れにくくなったと言われて久しいが、既存のアパレル、ファッション系テナントの活性化も念頭に置いた施策である。同施設のファッションゾーンは既存店ベースで前年比を上回っており、アパレルに逆風が吹く中でも健闘している。「フードホール」が加わることで、さらに施設全体の集客力を高まることが期待できる。
アパレル系テナントの新しい試みの1つが、「ジャーナルスタンダード」などを展開するベイクルーズグループのFLAVORWORKSが手掛けるカフェ業態「フリッパーズ」。西日本では初出店のパンケーキを主体にしたショップだ。内装はファッションを担当するスタッフが手掛けた。レディスブランド「スローブ イエナ」と協業したスイーツメニューを提供するほか、接客スタッフが着用するエプロンを同社グループのアパレルデザイナーが製作するなど、既存のファッションビジネスとの連動を念頭に置いた。
商品も、「JS(ジャーナルスタンダード)シリーズ」のメニューを企画するなど、ファッションの切り口を意識している。「既存顧客に加えて、飲食業態を利用する新規客がファッション系ショップを利用してもらえるような相乗効果を期待している」(マーケティング担当者)。ベイクルーズグループのアプリでためた“ポイント”を「フリッパーズ」でも使えるようにした。食を絡めたファッションビジネスの活性化策という新しい取り組みだ。
「エスト フードホール」の年間売上高目標は16億円。全館では92億円。ゾーン単位での改装は2006年3月以来のこと。大規模な業態転換は初めてだ。次代のファッション活性化の一助になるかどうか、今後の推移が注目される。
(樋口尚平)