ゴールドウイン 大江伸治 社長補佐 取締役 副社長 執行役員
精度高まった店舗運営、収益に貢献
update: 2015/06/29
店頭起点に変わりつつある現場意識
財務面はほぼ健全化したと言っていい。有利子負債は40億円ほどあるが、営業キャッシュフロー等でカバーできるため、実質、無借金経営の状態である。特筆すべきは棚卸資産(いわゆる在庫)で、期中に出店しているため増えているはずだが、期末で5億円ほど削減している。また、販売管理費率も増えているが、ショップの売上増により、コストも吸収できている。
「在庫は非常にきれいになりました。販管費の増加は直営店の出店に伴う経費が半分強ありますが、売上増や粗利率アップにより収益は改善しています。直営店の売り上げだけで約25億円、粗利で約15億円増えました。経費管理は相当、厳しくやっています。リテイル比率が増え、店頭在庫は相当増えているにも関わらず、総在庫が減ったことは非常に良い傾向だと思います」
「社員の意識も相当、変わってきている。卸型の出荷ベースで売り上げを立てるのではなく、店頭で売れた時点で売り上げを計上する“売り上げ仕入れ”化をどんどん進めています。店頭で消化してなんぼなので、そうすると無駄な仕入れはしなくなります。現場の意識は間違いなく変わってきました。商品企画でも、店頭のスタッフが相当、企画の人間に売れ筋情報をフィードバックする。消化出来ない限り数字にならないので、企画側の緊張感も全然、違います」
中期的な課題としては、「積み上がってきた利益剰余金をいかに効果的に活用するか」だという。新しい技術に投資することや、M&Aも選択肢の1つである。
「“オーガニック・グロース”とは別に、新たな投資が必要かも知れません。中期的なイメージでは、潤沢になった資金をどう活用するかが課題でしょう。全く新しい技術――今はまだ実用化は難しいが将来性が期待できるもの――へ投資するのもありでしょう。海外ビジネスも課題ですが、自社ブランドしか使えない制約があるし、日本ブランドに対する欧米顧客のある種の固定観念に基づいた期待と当社が打ち出したいことのマッチングがなかなか難しい。シューズなどは差別化しやすい商材ですが、アパレルはハードルが高い。少し時間がかかるでしょう」
略歴
大江伸治(おおえ・しんじ)氏 1947年生まれ。71年4月、三井物産入社。99年7月、同社本店繊維本部長付シニアスタッフ。00年6月、ゴールドウイン常務取締役として出向。03年1月、三井物産サービス本部本部長補佐。04年4月、同社理事コンシューマーサービス事業第一本部副本部長。07年6月、ゴールドウイン取締役専務執行役員。10年4月、副社長執行役員事業統括本部長兼総合企画本部長。12年4月、副社長執行役員総合企画本部長。14年4月から現職。