2018年のスポーツ市場を俯瞰する
拡大するライフスタイル提案
update: 2018/01/04
2018年の初頭に、今年のスポーツ市場の動向を俯瞰してみる。引き続き、2020年に開催予定の東京オリンピックに対する期待感は高まっているが、厳しい版権・ロイヤルティー規制などもあり、市場全体に影響を及ぼす具体的な動きはまだ見られない。却って、スポーツに関心が集まることで、その派生商品──アスレジャーなどの汎用ウエア、健康関連食品や化粧品──などといった他分野への波及が見受けられる。一方、競技関連は少子化の影響もあり、横ばい傾向が続いている。
レディスを切り口に汎用性ウエアが拡大中
売上規模が世界第1位のナイキ社をはじめ2位に付けているアディダス、3位グループのアンダーアーマー、アシックス、プーマに至るまで、現在最も力を入れているのはレディス関連分野と言っても過言ではないだろう。これは競技分野が頭打ちの状態にあるため、新しい伸び代を模索していった結果なのだが、ナイキ社のお膝元・米国では、“アスレジャー”という切り口で、スポーツウエアをタウンユースで着こなすスタイルが定着している。ヨガ・フィットネスウエアブランドの「ルルレモン」(カナダ発)が先鞭を付けたと言われる。
日本でもここ2-3年、急速に“アスレジャー”が注目度を高めてきている。スポーツブランドだけではなく──むしろ日本市場では、アパレルブランドがこぞって“アスレジャー”をコンセプトにした新規ブランドを立ち上げてきた。その勢いは加速して、自前のフィットネスクラブ開設にまで至っている。
しかし実際は、大型スポーツ量販店の“平場”で売られているような、アスレチック競技から派生したそれほど機能性が高くない汎用ウエアがボリュームを支えているのが現実だ。アウトドアの「ザ・ノース・フェイス」やアスレチックの「デサント」──「MoveSport」シリーズが典型例──などのブランドは、ハイエンド品は高機能性を持ち値段も高いが、街着で気軽に使えるボリュームゾーンの商材は、デザイン重視のこなれたものが主流だ。
競技分野以外のロットがまとまる“伸び代”と言えば、汎用ウエアである。最も競合の激しい分野でもあるが、スポーツブランドはその高機能性に裏打ちされたブランドイメージを活かし、ボリュームゾーンを取り込もうとしている。昨今は、ポロシャツに代表されるようなスポーツウエア=おじさまの週末着というイメージから脱却し、健康で美しいという女性が関心を持つ切り口で、レディス層を開拓しようとしている。