2025年のスポーツ市場を展望する──強みをさらに伸ばし、収益改善に臨む
update: 2025/01/06
2024年はパリ五輪が開催され、日本代表選手の活躍も後押しして、スポーツ業界にはまたとない追い風になった。円安や恒常的なコスト高など懸念材料もあるが、主要な国内上場6社(アシックス、美津濃、デサント、ゴールドウイン、ヨネックス、ゼット、順不同)の業績は、堅調な推移の企業が過半数を占めるに至った。予測の通り、IT化や直営店強化などのDTC(Direct to consumer)の取り組みはますます盛んになっている。年の初めに、2025年のスポーツ市場を展望した。
差別化できる商材やサービスの強化が進む
コロナ禍の影響は完全に払拭されたと言っていいだろう。代わりに恒常的なコスト高が懸念材料になっている。国内の消費熱は頭打ちで、円安基調ということもあり、国外ビジネスを強化する傾向はさらに強まっている。国内では効率化を目的に、在庫管理の厳格化や売り場の統廃合、Eコマースの拡充、ファン層の取り込みなど、DTCを絡めた新しい収益性の向上を目指す取り組みが盛んになっている。
慢性化している暖冬の影響もあったが、コロナ禍がひとつのきっかけとなり各社のDTC、ECのシステム整備やその効率的な運用など、極力ムダを省いて収益性を高めようという努力が少しずつ形になり始めている。加えて、差別化できる商材やサービスの強化をさらに推進しようという動きも活発化している。
外資系、国内を問わず、主要なスポーツメーカーにおいては、「フットウエア」(シューズ)と「アパレル」が主力商材という傾向が強くなった。ミズノのベースボールやヨネックスのバドミントンなど、特定競技のスポーツ用品に強みを持つ例もあるが、「フットウエア」と「アパレル」が両輪の如く、収益の重要な一角を占めている点に変わりはない。
実店舗へのテコ入れも増加傾向に
もう1つ、増えている傾向が、エンドユーザーとのタッチポイントとしてのリアル店舗の再構築だ。アシックス、ミズノ、ゴールドウインをはじめ、外資系ではニューバランスやアークテリクス等々、顧客へ直接アピールするための直営店を強化する動きが増えている。スポーツ大型店や専門店との卸ビジネスは、販売力のある取引先へ再編していき、新しい伸び代を直営やECなど、DTCに求めていく方向転換である。
普段着、ファッション用途としてのスポーツシューズやアパレルの需要をどれだけ取り込めるかという点も、ますます重要度が増している。競技者層のパイは限られているため──もちろんシェア拡大の努力は必須だが、規模の大きい“スポーツスタイル”や“ライフスタイル”と呼称される市場は魅力的な存在である。
直営店、DTCビジネスとライフスタイル市場の開拓とは密接に関わっている。スポーツチャネルでは取り込めない新規のユーザーを獲得できる可能性がある分野を攻める手段として、ますますDTCが注目度を高めていく状況にある。