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素材メーカーに見る“アスレジャー”の動向(下)

update: 2017/12/15

アスレジャー”市場を意識した素材は 模索の途上にある (写真は旭化成アドバンスの展示会)

アスレジャー”市場を意識した素材は
模索の途上にある
(写真は旭化成アドバンスの展示会)

機能素材メーカーの2019年春夏シーズン展示会における、“アスレジャー”市場に向けた提案の傾向。本国の米国では、フィットネスクラブのスタイル──ニット生地の体形が出るボディーコンシャスの着こなしが主流だが、日本ではその限りではない。“アスレチック”をルーツにした米国版の“アスレジャー”の範疇を抜け出て、日本市場のニーズに適した独自の拡大が進んでいるようだ。

アウトドアシーンで、カジュアルニーズが広がる

前回のレポートで触れたとおり、日本市場における“アスレジャー”はヨガなど、リラクシングウエアや、スポーツテイストのタウンユースウエアの域を出ていないのが現状である。カジュアル系アパレル企業は元々、機能性の知識を持ち合わせていないこと、その半面、スポーツ系アパレル企業はファッション性の表現が原則、苦手であることが背景にあると考えられる(例外もある)。もちろん、米国のように、フィットネスクラブのボディーコンシャスの着こなしをそのままタウンでも活かすというスタイルが根付いていないことも大きな要因の1つだ。

国内のスポーツ市場では、規模の大きいアスレチック(競技)が主体になる。外資系スポーツブランドや、国内組ではゴールドウインやデサントなどが、“アスレジャー”(ここではカジュアルの意味合いが強い)を意識した新しい商材を強化していることは確かだ。「デサント」ブランドの「MoveSport」シリーズは、日常着としてのスポーツウエアラインとして、スポーツ小売店(中でも量販店)では定番アイテムになっている。しかし、“アスレジャー”かどうかと言えば、判断は分かれるところだ。

“アスレジャー”はフィットネスから派生したものだから本来、アスレチック市場が主戦場になるはずだが、前述の通り、日本市場では異なる展開を見せた。その1つがヨガ関連ウエアである。快適性=ストレスフリーという切り口が、“アスレジャー”と結びついた面もある。

高機能性を保ったままで、タウンユースにも使われるようになっているスポーツウエアは何かと言えば、アウトドアがそれに該当するだろう。これを“アスレジャー”と呼べるかどうかは、さらに分析が必要だと思われるが、汎用性=日常シーンで着用されているという一点で見れば、着実にその傾向が強くなっていることは間違いない。しかもこの傾向は、国内外で共通した点。北米市場を中心に、高機能なアウトドアウエアがタウンウエアとして着られつつある傾向が強くなっている。

素材メーカーでは、アスレチックの中で一般アパレルの風合いがある機能素材や、またアウトドアでタウンユースに使えるような素材開発を求められるようになってきた。それだけ、アパレル関連企業からの要求の“ハードル”が高くなってきたわけだ。“アスレジャー”市場の形成は、しばらくかかりそうである。(終り)