『財務分析レポート』
スポーツメーカー上場7社の2011年3月期
海外依存の比率が高まる
update: 2011/05/23
震災の影響、メーカー間で格差
スポーツメーカー上場7社の2011年3月期決算が出揃った。個人消費がなかなか戻らない国内市場は軒並み苦戦傾向。増収増益を達成した企業は、海外市場で業績を伸ばした。増収増益が3社(アシックス、美津濃=以下ミズノ、ゴールドウイン)、微減収増益が1社(デサント)、減収減益が2社(グローブライド、ヨネックス)、減収損失拡大が1社という内容だった。増益を達成した4社はいずれも海外市場で利益を上げている。東日本大震災の影響は各社間でややばらつきがある。なお、15年に採用義務化が予定されている国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表で計上される包括利益(当期純利益に純資産価値の増減を加えた利益)の各社の数値は別表の通り。
回復の波に取り残される日本市場
08年9月に発生したリーマンショックの影響は、海外市場ではほとんど払しょくされたようだ。米国市場の成長が懸念されているとも聞くが、同国に展開しているアシックスやミズノなどは着実に業績を増やしている。欧州も同様に増収傾向。アジアでは、デサントやアシックス、ゴールドウインなどが展開している韓国市場が好調を持続している。中国市場は各メーカーともに足踏み状態で、大きな伸びはあまり見られない。東南アジア、オセアニアも大きな障害はない。
問題は国内市場である。いくら海外が順調だと言っても、業績の屋台骨を支えるのはおひざ元の日本市場だ。ここが増収に転じないと、本当の回復基調だとは言えない。震災がさらに回復を遅らせてしまった。しかし、国内市場のすべてが悪いわけではない。アウトドア市場は山ガールに代表されるように女性の参入が増えて活況を呈している。ランニング市場も東京マラソンに続き関西でも今秋、来春と市民マラソンの開催が決定。当面は注目の高いマーケットである。
中にはゴールドウインのように国内が堅調だった例もある。汗のにおいや加齢臭を分解する機能を持った「マキシフレッシュ」シリーズの肌着や、着圧で血行を改善する機能インナー「C3fit」などが国内の新しい市場を開拓し、増収に貢献した。健康、美容、快適性といったキーワードは国内のエンドユーザーが求める要素の代表格。まだまだ開拓の余地があると見て間違いないだろう。事実、各社はこうした新規市場の開拓を意識している。ミズノは今期、健康関連グッズやウオーキングシューズ、軽登山、水着といった健康分野(ウエルネス)で、約12億円の増収を見込む。健康関連グッズはTV通販で順調に売り上げを伸ばした実績がある。