『企業レポート』
「ザ・ノースフェイス」と「ユナイテッドアローズ」に見るブランド戦略
update: 2011/03/14
今春は新規出店が多い。特に大阪市内に新しく開業する商業施設が目白押しだ。3月3日、髙島屋大阪店がグランドオープン。今月は大丸梅田店の各フロアで五月雨式に新規テナントがオープンしていく。来月26日には、阿倍野地区に東急不動産が開発する「あべのマーケットパーク」がグランドオープンする予定。同日、難波地区の「なんばシティ」も改装オープンする。マルイ京都が同月27日。しんがりは、5月4日の梅田・JR大阪三越伊勢丹と、棟続きの専門店街「ルクア」。2012年開業予定の阪急百貨店うめだ本店が加わると、大阪・梅田の百貨店の床面積は、東京・新宿のそれを凌駕し、全国一の規模に拡大する。
神戸大丸にオープンした『ユナイテッドアローズ』のレディスオンリーショップ
一連の新店オープンの中で興味深いのがユナイテッドアローズ。既存のショップ「ユナイテッドアローズ」の新業態をこの春から出店し始めた。2月23日に神戸大丸店へ、レディス商材だけで構成した新しいコンセプトのショップをオープンした。3月3日には博多阪急へも出店。博多阪急のショップは「アーキペラゴ ユナイテッドアローズ」で、こちらもレディスの新業態。4つの既存ブランドで商品を編集・構成する。また、5月4日にはJR大阪駅ビル内に開業する商業施設「ルクア」内にも出店する。「ルクア」には、大丸神戸店に続いて2店目のレディスオンリーショップと「オデット エ オディール ユナイテッドアローズ」をオープンする。中でも神戸大丸店とルクア店は初のレディスオンリーショップ。既存の品揃えをそれぞれの立地に適した商品構成に編集し直した。さらにきめ細かいラインナップで、今まで出店していなかった立地に店舗を増やすという狙いである。全国の主要な施設や立地にはすでにメンズ・レディス複合型のショップを出店している。
こうしたレディス商材だけを切り離して、別の新しいショップに仕立て上げるという手法は、元になる店舗、「ユナイテッドアローズ」のブランドイメージ・収益性・運営ノウハウなどが確立され、軌道に乗っているからできることである。「ビューティー&ユース」というカジュアルとヤングに軸足を置いた業態も展開しているが、同ブランドは常にこうした新しい業態の可能性を探っている。
かつて、「バーバリー」の戦略で注目された方法に似ているが、1つのブランドであらゆる切り口の異なった編集で発信するというやり方である。「バーバリー」では、メーンラインとは別にヤングアダルトメンズ向けの「ブラックレーベル」やヤング・キャリアレディス向けの「ブルーレーベル」など、客層に合わせて異なる屋号のショップを出店してきた。もちろん、商品企画もそれぞれのショップで異なる。チェック柄など、ブランド共通のデザインモチーフを取り入れ、統一したイメージを重視していることは言うまでもない。
ブランドは年を経るに連れて顧客とともに年を取るが、各年代が買うべきラインとショップを作っておけば、全世代からの支持を集めることができる。また、ブランドの老化を防ぐことも出来る。こうした様々なラインを作ることにより、顧客の数のすそ野が広がる。また、ブランド全体の価値観が高くなることが期待できる。今春の「ユナイテッドアローズ」にも、こうしたブランドの多面性を高めようとする意思を強く感じる。