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アシックス 加藤克巳・取締役執行役員
グローバルセールス・マーケティング統括部長
真のグローバル化は人材交流から

update: 2012/07/02

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国内部隊にも変化の兆し

国内でも人材交流が進むに連れ、徐々にグローバル化が進んでいる。組織の体制も海外と連動した体制に整いつつある。

「現在、グローバルセールス・マーケティング統括部の副統括部長はフランス人。ブランドマーケティングチームの中にスウェーデン人がいるし、デジタルマーケティングチームはフランス人。その彼が最初に採用した人間がクロアチア人だった。1人移すことにより(グローバル化の)ドアがどんどん開いていく。世界本社がグローバルでリーダーシップを取るには多様な国籍の人材が必要だと考えました。尾山基社長がいつも言っている人材のグローバル化とも一致します」

「グローバルセールス・マーケティング統括部は7つのチーム(ブランドマーケティング、スポーツマーケティング、リテールマーケティング、サプライチェーン、IT、オニツカタイガー、プロダクトマーケティング)に増えたので、別途マーケティング部を設けました。1人のお客さんと対話するためのツールが7つある、ということです。最終的にはプロダクト(製品)が顧客を満足させる手段ですが、各チームのシナジーを発揮させたい。この4月から管理統括部やフットウエア部門もグローバルの冠が付きました。我々の部署みたいに全部英語でやるまでには至っていませんが」

アシックスの「DNA」を継承する

加藤克巳取締役

加藤克巳取締役

しかしここで1つ素朴な疑問がわく。グローバル化を進める意図は理解できるが、アシックスは日本で誕生し成長してきたスポーツ企業である。その“ものづくり”にこだわる匠の「DNA」=「アシックスらしさ」は、グローバル化しても果たして継承されるのだろうか。

「アシックスのDNAの部分が継承されるかどうか…それはものすごく重要な部分です。創業の理念だとか“らしさ”を『アシックス・スピリット』というプロジェクトを立ち上げ、アシックスの精神みたいなものを世界中の社員にきちっと継承していこうということをやっています。匠の力を結集してアシックスらしさを追求したい」

「懸念もありますが、しかし不思議と『アシックスに来たい』という人材は同じ(価値観を持った)人が集まってくる。企業文化の継承・維持については、むしろ欧州の人の方がそういう(らしさが薄まってしまうのではないかという)懸念を持っています」

ユーザーの支持を勝ち取る最も需要な存在は商品。世界的に強みとしているのはランニング関連商材だが、そのランニングに続く第2の柱として地域特性を考慮しながら、アシックスらしさを発揮できる分野の開拓を進めている。

「欧州ではCPS(コア・パフォーマンス・スポーツ)と呼ぶ地域特性のある競技を攻めています。ブリティッシュ・コモンウェルス(イギリス連邦)では圧倒的にクリケット。クリケットはシリアス系で、アシックスの企業イメージにフィットする。実はクリケットで豪州や英国は当社のシューズが強く、ナショナルチームで履いている人も多い。昨年、豪州のクリケットのナショナルチームと契約したが、結構インパクトが大きい。インドを攻めるときに重要になってくる種目です。地域的な当社にとってのウイニングカテゴリーがある。ヨーロッパでは陸上ホッケー。スペインではパドルテニス。これがテニスより人気あり、大きな市場規模がある。ここでもシューズのシェアNO.1になっています。日本ではこれがベースボールやバスケットボールに当てはまる。『アシックス』ベースボールの基盤を作れば韓国などへ広げていくことができます」

「また、トライアスロンはランニング市場の1つのピナクル(峰)として押さえていきたい市場です。かなりトライアスロン=アシックスというイメージが定着しています」