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外資系上場スポーツ企業、2023年12月期の業績展望──① adidas Group
利益率の改善が当面の課題に

update: 2024/01/30

adidas Groupの2023年12月期は 利益率の改善が焦点の1つ (画像は説明資料から抜粋)

adidas Groupの2023年12月期は
利益率の改善が焦点の1つ
(画像は説明資料から抜粋)

2023年12月期の主要な外資系上場スポーツ企業の本決算開示を間近に控えた現時点で、主要各社の業績を展望する。1回目は、adidas Group(アディダス社)を取り上げる。前期(2022年12月期)は増収減益で、売り上げは増えたが利益が減少するという難しい1年となった。当期(2023年12月期)も第3四半期終了時点で減収減益と苦戦傾向が続いている。

「Greater China」の低迷が足を引っ張る

adidas Group、2022年度・2018年度 財務数値一覧(表1)

adidas Group、2022年度・2018年度
財務数値一覧(表1)

過去5年間の業績の推移を比較した。表1は、5年前の2018年12月期の業績と昨シーズンの2022年12月期を併記したものである。売上規模は拡大しているが、利益が大きく減少していることが分かる。減益の主要因は、コスト高による影響が大きかった。

地域別では、売り上げの3番手にまで成長した「Greater China」(中華圏)の低迷が足を引っ張った。2018年度と比べると地域の区分けが変更されている個所もあるので単純比較はできないが、欧米や中華圏を除くアジア地域、ラテンアメリカは成長。やはり中華圏が取り残されている状況が見て取れる。

adidas Group、2022年度・2018年度 セグメント別売上高(表2)

adidas Group、2022年度・2018年度
セグメント別売上高(表2)


財務面も悪化した指標が多くなっている。商品回転率は3.0から2.4に低下した。売上総利益率(粗利率)も51.8%から47.3%へ下がっている。交差比率は143.6から126.7へ低下。自己資本比率も40.8%から24.6%と大きく減少した。その影響もあり、D/Eレシオが0.696(0.433ポイント増)と悪化している。

難しい商環境の続く市場だが、どこまで収益性を回復できているだろうか。コロナ禍が完全に終息した現在、企業の真の実力が試されているとも言えるだろう。(続く)