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スポーツ上場7社
オリンピックイヤーに臨む②「日本市場に伸び代はあるか」
健康ニーズが顕在化

update: 2012/06/04

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前回の第1回「重要度増す国外市場」では、海外市場への展開・拡販が収益両面で貢献している傾向が強まっていることを紹介した。アシックスやミズノ、ナイキやアディダスといった外資系のように社名がブランド名と同じでグローバル展開しやすいメーカーには特に当てはまる傾向である。その一方で、デサントやゴールドウインなど多ブランド展開するメーカーでも海外展開は進んでいる。成長の余地は海外市場という見解は異論のないところだろうが、それでは日本市場の伸び代は全くないのだろうか。2012年3月期の決算を見ても、国内市場が回復し増収増益に貢献した例は少なくない。

デサントは国内外ともに増収

スポーツアパレルに強みを持つデサントは国内外で17のブランドを展開する。ここ数年は社名ブランドの「デサント」を強化し、12年3月期では47億円(193.8%増)と海外で貢献しているブランドの3番手にまで急成長した。特にデサントコリアにおける伸びが大きかった。海外の売り上げトップは「ルコックスポルティフ」で143億円(24.3%増)、2番手が「マンシングウェア」で51億円(4.1%増)である。

国内では「アンブロ」や「ルコックスポルティフ」を中心にアスレチック(競技)関連ブランドが増収した。国内だけで11億円増の552億円だった。アシックスもミズノも国内市場は堅調で増収を達成した。伸びた分野がランニング関連やアウトドア、ウエルネス(健康)関連で、昨今のスポーツ市場において成長している分野が中心である。上昇傾向の波をうまくつかめば国内でも成長できる余地のあることが窺える。

デサントはこの他ブランド展開がリスクヘッジにもなっている。生産や販促などを考えれば1ブランドで全地域へ展開する方が効率的だが、トレンドが変わった時には急速に売り上げが減る危険性がある(活況を呈している分野へ集中投資してリスクを回避する方法もあるが)。例えば2012年3月期を例に挙げると、好調なブランドは「アンブロ」「ルコック」「デサント」などで、苦戦したブランドは「アリーナ」だった。多ブランド展開ゆえの非効率な面もあるが、リスクを回避するという一面があるのも事実だ。

今期も引き続き社名ブランド「デサント」に力を注ぐ。ほかのブランドも拡販を進める。オリンピック関連では、日本代表選手団にオフィシャルウエアを提供しているが、表彰台ウエアではない。最もインパクトが大きいのは、「アリーナ」で契約を交わした水泳の北島康介選手だろう。メダル獲得の有力候補なので、結果によっては販促に貢献する可能性がある。

社内で横軸展開している機能素材「ヒートナビ」(蓄熱保温機能)が118億円(67%増、小売りベース)、「サンスクリーン」(気化熱によるクーリング機能)が41億円(42%増、同)とそれぞれ増えている。今期からは立体裁断の「モーション3D」も新たに横軸展開し始めた。分かりやすい機能提案、他ブランド展開による生産性の効率化などを目的とした施策と思われる。