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『注目パーソン・インタビュー』
ゴールドウイン、大江伸治副社長

update: 2011/07/04

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ゴールドウイン、大江伸治副社長

ゴールドウイン、大江伸治副社長

2010年度(2011年3月期)に5期ぶりの増収増益、14期ぶりの復配を実現したゴールドウイン。以前から主力のアウトドア事業は好調を維持していたが、長らくアスレチックなどの赤字事業が収益の足を引っ張っていた。4期前にスタートした中期3カ年経営改革が功を奏し、財務体質が大幅に改善。2009年3月期に利益面で黒字転換し、前期には売り上げも増収に転じた。一連の改革を陰から支えたのは、07年6月、三井物産からゴールドウインの取締役に招聘された大江伸治副社長だ。本社社屋の売却や在庫の大幅削減、仕入・販売の適正化など大胆な施策を実行し、バランスシート(B/S)の健全化、組織の効率化を強力に後押しした。その結果、前(2010)年度は中期計画の実施後初の増収増益、復配という節目の年になった。財務面、収益面で急速に改善した理由とその背景は何か。また今後も改善すべき点はあるのか、大江副社長に話を聞いた。

アスレチックが下げ止まる

07年3月期から09年3月期の中期計画に引き続き昨年、2010年3月期を初年度にする新たな中期3カ年計画を策定した。今年度はその2年目だ。07-09年の旧中計は「基礎収益力の回復」が基本テーマだった。昨年からスタートした新中計は全事業において黒字化を実現し、「成長軌道に乗せることが最大の課題」である。新中計の初年度に当たる2010年度はあらゆる面から節目になった。

「先の中計では『基礎収益力の回復』が基本的なテーマでした。そのため、リストラとBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング=業務改革)を徹底したので、減収基調にならざるを得ませんでした。前期から始まった新しい中計では、旧中計を踏まえ基礎収益力はボトムラインを確保したという前提で、いかに反転攻勢をかけるか、成長軌道に乗せるかが最大の課題です。その意味では、新中計の初年度で増収基調に転じることができたことは大きな成果だと考えています。そのほかの大きな成果としては財務面で営業キャッシュフローが34億円改善したこと。これほど大きな数字になるとは思っていなかった。1年目のシナリオとしてはほぼ合格点だと思います」

事業別・ブランドごとの実績では、不振だったアスレチックが復調。アウトドアは「アグ」の取引形態変更による減収があったものの好調を持続している。「C3fit」や「MXP」など機能インナーを中心とした新規事業も貢献した。

「アウトドアは『アグ』の代理店契約変更の影響があり、全体で1億2000万円ほど減収しましたが実質は増収基調にあります。今春からスタートした『ヘリーハンセン』(HH)のアウトドアラインも滑り出し好調です。総じてアウトドアは一番堅調な分野で、今後の当社の業績をけん引する存在である点は変わりません」

「懸案のアスレチックでは、『チャンピオン』(Ch)が大きく改善しました。従来型のホールセールを整理し、直営や自主管理売り場を出店しました。またNSC(ナショナルスポーツチェーン=全国展開するスポーツ小売店)へもショップインショップを出しました。これが思いのほか順調で、一番の懸念だった発注流動におけるBPRも相当、思い切って進められた。『スピード』はFINA(世界水泳連盟)の水着規定変更の影響から抜け出せたと思っていたところに今回の地震があった。苦労しましたが、今年の5月に入ってようやく震災前の状況に戻りました。ウエルネスでは『ダンスキン』は好調ですが、『エレッセ』が苦労しています。しかし収益改善の要因は、総じてアスレチックが下げ止まったことが大きかった」

「新しく市場へ投入した新規事業である機能インナーの『C3fit』『MXP』は、両ブランド併せて12-13億円くらいの規模に成長しました。前期から8億円ほどの増収です。わずかですが損益分岐点をクリアしています」