ミズノ 取締役 七條毅氏
(グローバルアパレル事業・グローバルアパレルプロダクト本部担当)
日本市場は競技主体に、海外はランニングとマルチで開拓
update: 2012/08/06
各地域のニーズに企画を合わせる
商品企画は、「ウエスタンワールド」(欧州、米国、豪州、ブラジルで共通のコンセプト)、「アジアンワールド」(東南アジア、日本、中国)、日本の3つの大きなくくりで分けて考えている。
「ウエスタンワールドの企画を、12年秋冬くらいから欧州の企画チームを作り、デザイナーも採用して進めようとしているところです。“体格”の部分では、ランニングは欧州と米国は同じパターン。ゴルフウエアなどでは今秋から、日本と中国のサイズを完全に一致させる予定です」
アジアで最も売上規模が大きいのは中国。過去3シーズンほどは店舗のスクラップや在庫の見直しなどを進めた影響で損失を計上したこともあったが、再浮上の軌道に乗りつつある。
「中国はエンドユーザーがスポーツウエアをカジュアルに代用していた面がありました。それがカジュアルウエアの台頭により、スポーツウエアのカジュアルユースが減っていったのではないかと思われます。少し高めの年齢層――35歳以上ではそういうことはあまりないのですが、ヤングカジュアルでは一般のカジュアルブランドが加わるようになったと思います。供給過多による競合激化も売り上げ確保が難しくなった一因でしょう」
ミズノが強みにする機能性素材を生かした提案も強化しつつある。エンドユーザーの認知度はまだこれからだが、今後大きく伸びる可能性を残している。
「昨年辺りから、基幹素材の『ブレスサーモ』(吸湿発熱機能)や『アイスタッチ』(接触冷感機能)で、上海の試験機関でその機能性を認可してもらい、『吸湿して繊維自体が発熱する』『肌に触れて接触冷感を発揮する』といった表現で機能性を謳えるようになりました。他ブランドは同じ手法で機能性を謳えなくなるので、機能訴求は今までよりやりやすくなったと思います」
「13年春夏からはエコロジー素材を使ったウエアを展開する計画です。年内辺りから市場へ投入します。新しい付加価値を受け入れてもらえるかどうか、切り口を変えた提案です」
成熟した欧米市場は中国など発展途上の市場とは攻め方が異なる。各地域のユーザーのニーズに合わせて、展開する商材を替えている。
「成熟したマーケットである北米・欧州はランニングアパレルを中心にして、フットウエアのポジションが順調に高まっているので、ランニング専門店にミズノの高付加価値商品をフットウエアとマーケティングを連動させながらどんどんシェアを広げていきます。東南アジアもランニングを切り口にしながら、もう少し幅の広いファンランナー層――社内ではソーシャルランニングと呼んでいますが――へ単品ではなくランニングアパレルとマルチトレーニングをミックスした品揃えで、コーナーを取って開拓するのがこれからの方針です」
「まだ市場の開拓が進んでいないロシアへも展開していきたい。連結決算の対象にはなっていない代理店ビジネスでは、ブラジルのアパレル売り上げが20億円くらいになっているので、ここも増やしていきたい。ブラジルもランニングを核にしたマルチトレーニング展開です。ブラジルの柔道ナショナルチームに柔道着を供給していますが、この面でも拡大に期待ができそうです」