小松精練、代表取締役社長 池田哲夫氏
新しい素材開発の肝は“高次加工”
update: 2018/08/24
個性的なウエア素材を開発・提案している小松精練。2018年3月期は連結売上高386億円(7.8%増)、経常利益28億円(43.4%増)と増収増益を達成した。今期(2019年3月期)の第1四半期(4-6月)も連結売上高95億円(8.0%増)、経常利益7億8,500万円(15.9%増)の増収増益で、通期目標の売上高400億円、経常利益29億円の達成へ向けて、順調なスタートを切った。好調の要因は何か、また強化すべきことは何か、陣頭指揮を執る池田哲夫社長に話を聞いた。
差別化のカギ握る“感性”
同社はファッションやスポーツ分野において、個性的な機能性素材を開発・提案している。衣料ファブリック部門における主力は「ファッション」関連で、売上高は154億円(12.9%増)と成長分野だ(前期実績)。「スポーツ」関連も同58億円(7.9%増)と堅調な推移である。財務面でも改善が見られる同社だが、収益性の改善については特別な事をやっているわけではないと説明する。
「当たり前のことを当たり前にやってきた結果が、好決算につながっているだけです。(営業利益率が5%台という)利益率もまだまだ低いと思います。今期(2019年3月期)は売上高400億円を計画していますが、ゆくゆくは500億円、営業利益で50億円という規模感を目指していく必要があると感じています」
ファッション同様、スポーツシーンにおいても、大手素材メーカーとは一線を画した個性派素材メーカーとして存在感を発揮している。しかし収益を上げるためには「量が必要。ボリューム市場を狙わないと利益を確保できない」(池田社長)と業容拡大を目指す考えだ。その上で住み分け、アパレルメーカーのニーズを取り込むには、「感性が重要だ」と説明する。
「スポーツシーンでも、先んじて外資ブランドでファッション要素を採り入れるようになりました。最近では、国内スポーツメーカーでもタウンユースを採り入れたウエアを作るようになってきています。スポーツウエアでもファッション性の重要度が増しています」
「“感性”は数値化できません。好きか嫌いか、良いか悪いかという評価基準なので、真似しにくいものです。ところがスポーツやユニフォームもそうですが、耐水圧や防風性などの機能性は数値化できるため、真似もされやすく差別化が難しい。なぜファッションが難しいかというと、感性が求められるからです。機能一辺倒ではなく、同時にこの感性も磨いていかないと、差別化できる生地は開発できません」
スポーツのカジュアル化、ファッション化が当たり前になっている昨今、こうした“感性”を重視したテキスタイル開発が同社の強みになっている。
「当社は中山賢一代表取締役会長が作った“感性と技術との融合”というコンセプトをベースにしています。機能性だけでは勝てないと考えています。例えば、国産玉ねぎの外皮成分を使った『オニベジ®』なども技術を駆使した素材ですが、堅牢度を維持しながら、そのナチュラルな見え方が支持を集めている。大変、順調に売れています」