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アシックス、新しい「中期経営計画2026」を公表──「グローバル×デジタル」で成長拡大を目指す
「営業利益800億円以上、売上比率12%前後」を視野に

update: 2023/11/29

 来年度からの3カ年中期計画では売上額を掲げず 「営業利益800億円以上、売上比率12%前後」という利益目標を示した (画像は主力のパフォーマンスランニングシューズ「ゲルカヤノ」)

来年度からの3カ年中期計画では売上額を掲げず
「営業利益800億円以上、売上比率12%前後」という利益目標を示した
(画像は主力のパフォーマンスランニングシューズ「ゲルカヤノ」)

アシックスが11月28日、第9回目の「インベストメントデイ」を開催し、来年度からスタートする新しい「中期経営計画2026」(2023-2026年度)の内容を公表した。廣田康人 代表取締役社長CEO兼COOは新中計の狙いについて、「『グローバル×デジタル』でさらに成長拡大を目指すこと」だと語った。

3つの重点戦略「グローバル成長、ブランド体験価値向上、オペレーショナルエクセレンス」

アシックス、新「中期経営計画2026」主な数値目標

アシックス、新「中期経営計画2026」主な数値目標

「インベストメントデイ」は同社が投資家やシンクタンク、報道関係者を対象に、自社の経営に関する取り組みを紹介する会で、今回で9回目を迎えた。同説明会には、次期社長に内定している富永満之 常務執行役員CDO・CIOも出席。新しい「中期経営計画2026」の骨子を説明した。

現在進行中の中期計画では、2021-2023年度の3カ年の業績目標を掲げている。利益面では、営業利益が520億円(通期見通し)で、当初計画の250億円を大きく上回ることが確実だ。「この3年間で、成長軌道へ転換することができた」(廣田 社長)と手応えを感じている。

新しい中計では、「グローバル」と「デジタル」をキーワードにして、この成長軌道をさらに拡大させる構えだ。重点戦略として3つの目標、「グローバル成長、ブランド体験価値向上、オペレーショナルエクセレンス(市場優位性の構築と維持、向上)」(富永 常務)を掲げる。

1つ目のグローバル成長では、欧州・米州に次ぐ第3の収益の柱になる市場の構築を目指す。具体的には、伸び代の大きい中華圏(Greater China)を筆頭に、ほかのアジア諸国(インド、タイ、マレーシア、インドネシア等)の収益性の向上にも力を入れ、早期に年間売上高1億ドルを目指す計画だ。また、回復基調にある米国ビジネスの収益性向上も継続した課題である。

2つ目のブランド体験価値向上では、ITを活用した顧客管理、DTCを通じた顧客との接点拡大が取り組みの1つ。ECと直営店、卸ビジネスの最適なチャネルミックス、「OneASICS」会員を増やすことなども重要な課題だ。

3つ目のオペレーショナルエクセレンス(市場優位性の構築と維持、向上)では、7年前から導入を進めてきた基幹システムを活用し、全社規模による在庫の管理やサプライチェーンの最適化をさらに推し進める。

売上目標は掲げず、利益達成を重視

数値目標だが、売上高は公表していない。売上額を追い掛けるがあまり、利益追求がないがしろになることがないよう考慮したという。「利益を確保、達成することが大事だという点を、社員と共有している」(廣田 社長)。

営業利益の売上比率12%前後という具体的な数値は、売上総利益率が53%(第3四半期で51.2%)まで改善できるという分析・見通し、また販管費を41%までに抑えるという計画に基づく目標だ(53%-41%=12%)。広告宣伝費は売り上げの8%を充てる計画である。

キャッシュフローは年間400億円以上を安定して創出できると見ている。3年間の配当後のフリーキャッシュは約400億円と想定。次の成長期を見越して、必要な分野へ積極的に投資する計画を立てている。