東レの機能素材戦略――
スポーツの強みをファッションへ、新規市場を開拓中
update: 2012/07/12
各スポーツメーカーは毎シーズン、独自の機能性を模索して新製品を開発する。今まで培ってきたノウハウと機能素材を生かし、新しい価値観をユーザーに提案する。一連のスポーツアイテムの中で、ウエアは素材由来の機能が最も色濃く反映される商材の1つだ。料理の仕方で様々な機能性を発揮できるようになる。昨今その機能性素材はスポーツシーンにとどまらず、ファッションなど一般のライフスタイルのシーンにも活躍の場を求めるようになった。機能素材を得意にする素材メーカーの東レも、新しい分野への展開を進めている。
キーワードは“快適性”
東レのスポーツ・衣料資材事業部では現在「spin‐off product」(スピン・オフ プロダクト)と題し、スポーツで蓄積してきた機能性素材のノウハウを日常生活やファッションのシーンに応用するべく、開発を続けている。
スポーツの機能素材と言っても競技種目により必要とされる機能性が異なってくる。屋内で激しく動き回るバスケットボールやバレーボールでは何より吸汗速乾機能が求められるし、屋外でプレーするサッカーや野球には吸汗速乾に遮光機能が必要となってくる。しかし “快適性”を求めるという点では、日常生活と基本的には変わらない。
春夏シーズンで求められる代表的な機能性は吸汗速乾性やクーリング(冷却)機能だ。特に昨夏から節電が叫ばれている状況で、吸汗速乾やクーリング機能はビジネスパーソンにとっても必要不可欠な機能性と言えるだろう。秋冬シーズンはもっと明確で、防寒を目的とした発熱・保温、防風性が求められる。東レが「ユニクロ」と共同開発した「ヒートテック」がその一例だ。
12年春夏シーズンの動向を見ると、織物では、シャツ素材で吸水速乾・薄手・軽量が特長で、360°全方位に伸びるストレッチ性を持つ「フレックススキン+(プラス)」や、生地にドット(水玉)の穴が開いているクーリング素材「ドットエア」、スポーツシーンではパンツ、カジュアルユースでも使用されている伸縮性素材「フィッティ」などの素材が人気を集めている。ニット素材では、シャツ用の吸水速乾機能を強化した「フィールドセンサー秒乾(びょうかん)」。ちなみに今春、発売された「デサント」ブランドの「タフポロ」には、「フィールフィット」を特殊加工し綿の風合いを出した生地が使われている。
こうして見てみると、軽量・ストレッチといった昨今必要とされている機能性を生かした素材が注目を集めていることが分かる。快適性を実現するために機能素材が生かされている。