株式会社ミマキエンジニアリング
簡単に導入できる、環境と人にやさしい次世代捺染システム
簡単に導入でき、環境にも配慮した
次世代の捺染システムに注目
アパレル業界の生産現場におけるデジタル化は日進月歩である。
なかでもプリント技術においては、パソコンで制作した柄データをインクジェットプリンタで生地へ直接プリントできるようになり、オリジナル生地の生産が簡単にできるようになった。
しかし、天然繊維や一部の化学繊維の捺染ができるインクジェットプリンタは高額なものが多く、工程上、大量の水を使用しなくてはならず、導入するまでのハードルが高い。株式会社ミマキエンジニアリングでは、導入のハードルを低くし、プロセスが簡単な次世代の捺染システムを提案しているという。どんなシステムなのか見せてもらった。
環境と人にやさしい次世代の捺染システムとは
ミマキエンジニアリングは、大型の産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタ、インクなどの開発・製造・販売・保守サービスを一貫しておこなう企業である。さまざまな分野の印刷機器を開発してきたなかで、街でよく見かける“のぼり旗”やTシャツ、トートバッグなどノベルティグッズの印刷向けプリンタの開発もおこなってきた。
近年、アパレル業界のデジタル化やサステナブルなものづくりへの取り組みが進み、同社でもテキスタイルプリントの新たなソリューションを数々送り込んできた。例えば、同社の技術を詰め込んだDTF(Direct to Film)プリンタ「TxF150-75」は主力機種の一つである。
そして現在、同社が力を入れているのが捺染顔料転写システム「TRAPIS(トラピス)」である。天然繊維や一部の化学繊維生地の複雑な捺染工程を簡素化するため、同社が開発した。
「TRAPIS」は、同社が開発した熱転写専用の顔料インクを用い、専用転写紙にプリントし、同社が推奨している熱転写機で生地へ転写する。パソコン上で作成した柄データをプリントし、熱転写するだけのシンプルな工程で、特別な知識はなくとも使うことができる。 また、生地に直接印刷するDTGプリンタでは前処理が施された生地を使わなくてはならないが、「TRAPIS」はその必要がなく、さまざまな生地にプリントが可能だ。
天然繊維・化学繊維どちらもプリントでき、得意とするのは麻やナイロンを用いたアウトドアグッズに使用されるハードな生地だが、スポーツウェアに使われるようなストレッチ性のある生地やスーツの裏地に使われる薄手のものにもプリントは可能。衣料品から、傘やバッグなどの服飾雑貨、カーテンやクッションなどのインテリアファブリックなどにも、プリントした生地を使うことができる。
サステナブルなモノづくりのためにデジタル化は急務
ミマキエンジニアリングが「TRAPIS」を開発するきっかけになったのは、2015年11月にイタリア・ミラノで開催された国際繊維機械見本市「ITMA2015」である。世界各国から集まったアパレル産業機器を見て、これから求められることは“生産スピード”と“サステナブル(持続可能性)”だと感じた。
国内におけるアパレル製品の生産現場では、さまざまな課題が残されている。例えば捺染職人の高齢化で、職人が減り、技術継承が難しくなりつつある。また、従来の手捺染は必要な分だけを染めることが可能ではあるが、コストパフォーマンスの面で課題がある。さらには作業工程上、大量の水を必要とする。
こういった課題を解決するべく、同社では強みである印刷技術と開発力を活かし、新たな専用顔料インクの開発を進めてきた。
これにより、技術はデジタル化して捺染業界の衰退は防ぐことができるだろう。また、無駄に生地を染めることもなく、プリント方法によるが水もほとんど使用しないので、環境にもやさしいものづくりができる。 さらには、1時間で約15mプリントすることができ、後処理する必要もないため、すぐに次の工程へ進められ、生産効率を上げることも可能になる。
捺染顔料転写システムの開発は現在も続いており、初めた頃は生地が硬化して衣類に不向きな仕上がりだったが、改良を重ねて現在では衣料品にも利用可能なプリントができるようになった。まだプリントには困難な素材もあるそうだが、同社の開発力でさまざまな素材に対応できるようになることを期待したい。
必要とする機器はプリンタと熱転写機だけ。あとは専用用紙と専用顔料インクを揃えれば、オリジナル柄の生地をつくることが可能という捺染顔料転写システム「TRAPIS」。専門的な技術や知識も必要なく、誰にでも簡単に使え、環境にも配慮した画期的なシステムを見せてもらい、技術継承する人が現れず何もしないより、廃れる前にデジタル化を図ることの重要性を実感した。 さまざまな生地を小ロット・短期間でプリント加工ができることで、一部生産国への技術依存も低減し、消費地に近い国内で在庫リスクの少ないテキスタイルビジネス、アパレル生産も可能になるのではなかろうか。
(ファッションライター 苫米地香織)
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