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シキボウの抗ウイルス・抗菌加工「FLUTECT®
アパレルをはじめ採用製品が急拡大

シキボウの抗ウイルス・抗菌加工 「FLUTECT<sub>®</sub>」はファッションブランド 「アンリアレイジ」にも採用されている

シキボウの抗ウイルス・抗菌加工
「FLUTECT®」はファッションブランド
「アンリアレイジ」にも採用されている

シキボウの抗ウイルス・抗菌加工「FLUTECT®」(フルテクト)。2006年に開発された15年の歴史を持つ加工技術だが、昨年来のコロナ禍において、その知名度が急速に高まっている。改めて公衆衛生に関心が集まった背景もあり、抗ウイルスや抗菌機能のニーズが増加した昨今、同社の「フルテクト」の採用事例も増えてきている。パリコレに参加するファッションブランド「アンリアレイジ」にも使われるなど、その可能性は広がりを見せている。

“抗ウイルス・抗菌加工”の集大成ともいえる「フルテクト」

シキボウの抗ウイルス・抗菌加工の歴史は古く、1981年の抗菌防臭加工「ノンスタック®」にまでさかのぼる。細菌の増殖を抑えることにより防臭効果を発揮する加工で、靴下などに採用され、今も売れ続けているベストセラーの加工だ。その後、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の院内感染が問題になった1993年には、制菌加工「ノモス®」を開発。MRSAにも効果があり、現在もユニフォームなどで広く採用されている。

「フルテクト」開発のきっかけになったのは、2004年にWHO(世界保健機関)が出した声明だ。強毒型「鳥インフルエンザが人に感染した時の危険性」に警鐘を鳴らす内容だった。この声明を参考に、シキボウは国立の衛生研究機関と共同で、鳥インフルエンザウイルスに効果を発揮する新しい加工技術の開発をスタートした。こうして誕生したのが「フルテクト」だった。40年来、培ってきたシキボウの抗ウイルス・抗菌加工の集大成と言えるのがこの「フルテクト」だ。

シキボウの抗ウイルス・抗菌加工「FLUTECT®
【インタビュー】──機能性を持った“実用品”を提供できる強み

時代のトレンドをうまく捉えたシキボウの抗ウイルス・抗菌加工「フルテクト」。その強みや魅力は何か? 執行役員の尾﨑友寿 繊維部門営業第二部長と、辻本裕 戦略素材企画推進室長に語ってもらった。

ノウハウの蓄積が功を奏す

──「フルテクト」開発のきっかけは?

辻本 当社の抗菌加工は、1981年に開発した抗菌防臭加工「ノンスタック®」が始まりです。1993年には制菌加工の「ノモス®」を開発しました。2004年にWHOが公表した「鳥インフルが人に感染する危険性」に関する声明を受け、“H5N1型インフルエンザウイルス”に効く抗ウイルス加工を開発しようと取り組んだのがきっかけです。「フルテクト」は昨年のコロナ禍で、新型コロナウイルスにも効果を発揮することが確認できました。

──急速な顧客ニーズの高まりに対し、スムーズに製品を提供できた理由は?

シキボウ株式会社 繊維部門営業第二部長 執行役員 尾﨑友寿 氏

シキボウ株式会社
繊維部門営業第二部長 執行役員 尾﨑友寿 氏

尾﨑 元々「フルテクト」はタオルやパジャマに採用されることが多かったのですが、コロナ禍でシャツなど色々なアイテムに拡大しました。今まで開発を続け、準備してきたことが功を奏したのだと思います。加えて、自社に抗ウイルス・抗菌性の試験場(シキボウ江南)があったこともプラスに働きました。検査機関がパンク状態の時、自社でエビデンスを確認することができました。

──「フルテクト」製品の開発で苦労したことは?

シキボウ株式会社 戦略素材企画推進室長 辻本裕 氏

シキボウ株式会社
戦略素材企画推進室長 辻本裕 氏

辻本 加工の効果を確かめる対象がウイルスなので、実験できる場所が限られていました。エビデンス(科学的根拠)を確認し、企画に落とし込んで製品化するのは苦労しましたね。洗濯の耐久度をはじめ、加工する生地、用途、価格など、クリアすべき課題がありました。

尾﨑 「フルテクト」は“目に見えない”加工技術なので、そのメリットを説明するのがとても難しかった。顧客によってニーズも異なりますし・・。コロナ禍がきっかけで、皆さんの「フルテクト」に対する関心が高まったように感じます。

──「フルテクト」を採用した顧客の反応は?

尾﨑 たいへん期待されていると感じています。量販店のイトーヨーカドーさんでは、「フルテクト」の製品を集めたコーナーを展開してもらっています。エンドユーザーの反応も上々で、例えば不織布のマスクは30枚入りで2,000円と高額なのですが、売れ筋商品になっています。

辻本 ポケットの内布──スレーキの引き合いもあります。常に手が触れる部分なので、“もってこい”の使い方です。

社内のモチベーション向上にも貢献

──「アンリアレイジ」とのコラボのきっかけは?

尾﨑 お付き合いのある縫製会社経由でデザイナーの森永邦彦さんが抗ウイルス・抗菌加工を探していることを知りました。ご本人から当社の「シキボウ江南」をぜひ見学したいと連絡をいただき、わざわざ現場へ足を運んでくださいました。たまたま現場の女性技術者の1人が「アンリアレイジ」の大ファンで、森永さんも“ご縁”を感じられたようです。加工現場や試験施設を見学され、「フルテクト」に手応えを感じていただけたようです。まさしくご縁だと思います。

──「フルテクト」の今後の展開について。

辻本 どちらかというと綿素材に向いている「フルテクト」ですが、ポリエステルにも加工が可能です。われわれは「フルテクト」の高い技術力をベースに、安定品質の製品=実用品を提供できる点が最大の強みだと考えています。

尾﨑 採用分野はワーキングやユニフォームのほか、さらにスポーツ分野へも展開を広げられたらと考えています。「フルテクト」の活躍は、社外ビジネスにとどまらず、社内へもいい影響をもたらしてくれました。最近の打ち合わせでは、新規の問い合わせが入ったという報告を必ず聞くようになった。社内のモチベーションも高まっています。「フルテクト」を足掛かりに、当社の機能製品をさらに知っていただけるように努力したいと思います。(敬称略)

新型コロナウイルスにも性能を発揮

簡単に「フルテクト」の機能性のメカニズムをご紹介しよう。新型コロナウイルスもそうだが、ウイルスには外側に脂質性の“エンベロープ”(外殻)を有しているタイプがある。「フルテクト」はそのエンベロープを破壊し、ウイルスを不活性化する。洗濯を繰り返してもその機能性はほとんど変わらないという優れものだ。テキスタイルに「フルテクト」加工を施すことで、抗ウイルス・抗菌性を持たせることができる。

また昨年、「フルテクト」加工は新型コロナウイルスにも性能を発揮することが確認された。(一財)日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の試験で、「フルテクト」加工されたレーヨン100%の不織布、綿100%の織物で、ウイルスの減少率が99%以上という結果が得られた。

“エビデンス”(科学的な根拠)が得られた「フルテクト」加工は、各方面から高い関心を集めた。同加工を施した不織布のマスクは30枚で2,000円という高額にも関わらず、量販店で売れ筋商材になった。採用された製品はマスクのほかに手袋やTシャツ、ハンカチなど複数のアパレルにも広がった。蓄積してきた抗ウイルス・抗菌加工の技術を活用し、効果的に顧客ニーズを取り込むことに成功した。

自社の試験施設、「シキボウ江南」が強みに

急速に拡大したコロナ禍に対し、なぜ同社は速やかに製品を開発・提案することができたのだろう。それには、自社の試験施設「シキボウ江南」(愛知県江南市)の存在を抜きにして語れない。厳格な管理が要求されるウイルスを使った効能試験が実施できるバイオハザード施設を有している強みがある。

「シキボウ江南」は生地の加工・製造を行うだけでなく、抗ウイルス・抗菌加工の機能試験も可能な施設だ。「フルテクト」加工の効果を調べる際にも力を発揮した。加工技術の蓄積、自社の試験施設を活用することで、いち早く「フルテクト」の製品を提供することができたわけだ。

様々な可能性を持つ独自技術

現在、「フルテクト」はマスクだけにとどまらず、さらにその採用分野を拡大しつつある。レディスのニットやメンズのドレスシャツ、少林寺拳法の道着まで、ますますその可能性が広がっている。

パリコレに出展するファッションブランド「アンリアレイジ」とのコラボレーションもその1つだ。コロナ禍をきっかけに、衛生に対する関心が高まった同ブランドのデザイナー、森永邦彦氏。何か効果的な抗ウイルス・抗菌加工はないものかと探していた矢先に出会ったのが「フルテクト」だった。

今年3月に開催された「パリコレ」に出展された作品にも、「フルテクト」が採用されている。“目に見えない”機能性だが、感性の鋭いファッションデザイナーが興味を引かれた「フルテクト」には、まだ新しい可能性が眠っているのかも知れない。

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