TOP > マーケット分析 > 2021年シーズンのスポーツ市場を展望す...

2021年シーズンのスポーツ市場を展望する
ビジネス再浮上の波に乗れるか?

update: 2021/01/04

< 前のページへ1ページ2ページ

取り組みが加速するDTC、カギ握る自社品開発

競技や分野を超えた共通のトレンドとして、「サステナブル」が挙げられる。これは健闘しているアウトドアとも相性が良く、環境に配慮した素材や生産方法などが商品企画のセールスポイントとしてよく見られるようになった。素材メーカーの提案にもその傾向は見られる。再生ポリエステルやナイロンを採用した機能性素材の企画だ。材料の調達が不安定である事、物性の安定が難しい事、既製品に比べ割高な事など、乗り越えるべき課題は多いが、今後も注目度が高まっていくことは間違いないだろう。

コロナ禍で「安心、安全」に対する意識も高まった。いわゆる抗菌、制菌といった機能性である。機能素材を使った“マスク”(マウスカバー)がヒットしたが、こうしたニーズも定番しそうな勢いだ。「サステナブル」や「安心、安全」はかねてスポーツメーカーが取り組んできた事。本来の強みである「機能性」と競合せず、共存できる要素だ。

ソーシャル・ディスタンスは、ECの活用を促進させた。2020年の市場展望でも指摘したが、先んじて実用化が進んでいるのが、「DTC」(Direct To Consumer)だ。卸や小売店など他社の販路を経ず、直接メーカーがエンドユーザーにアプローチすることを指す。直営店やECサイトの展開が一般的である。リアル店舗と顧客をつなぐ目的で、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の利用例も増えてきた。

ICTやECなどデジタル関連の取り組みは比較的、雑貨やアパレルの企業において進んでいる。代理店経由の物流が多かったスポーツ業界でも、DTCへの注目が高まり、それに関する投資や強化が進み始めた。

しかしDTCと言っても、各ブランドの世界観やそもそもの製品が重要である事に変わりはない。リアル店舗の作り込みも不可欠だ。 “ニューノーマル”(新しい常態)と言う言葉で「DX」(デジタルトランスフォーメーション)の注目度も高まっているが、本業をおろそかにし、ECやICTへの取り組みが目的になっては本末転倒である。今一度、差別化できる自社製品の開発を強化する時期ではないだろうか。