ミズノグループのシャープ産業──構造改革が一段落、効率化が進む
update: 2024/12/27
ミズノグループのシャープ産業(兵庫県神戸市東灘区)の構造改革が一段落し、成長基調に乗る体制が整った。長らくミズノでベースボール(野球)ビジネスを担当してきた久保田憲史社長が陣頭指揮を執り、およそ2年かけて組織体制を整備した。同社は阪神タイガースの公式グッズの企画・製造・販売が有名だが、今後はスポーツ以外の新規分野の開拓も視野に入れている。
非スポーツ分野の開拓にも注力
シャープ産業は2020年にミズノがグループ企業化した。1957年の創業で、高校野球大会に出場する学校のペナントを製作し、いち早くお土産、記念品市場を開拓してきた先駆者でもある。ミズノは競技者層を強みにしているが、ファン(観戦者)層の開拓はまだ十分に進んでいなかった。そのファン層の販路を持ち、かつ短納期で製品を生産・納品できる強みを持つシャープ産業は、新規市場を増やしたいミズノにとっては、シナジー効果が期待できる魅力的なM&Aの対象だった。
親会社・ミズノの協力で、老朽化した不動産の整理などハード面に加え、就業規則や社員の待遇などのソフト面も改善。資本も投下して財務基盤を安定させ、人員のリストラもせず、組織の体制を整備していった。2年かけて実施した改善策が功を奏し、成長基調に乗る体制が整ったようだ。
売上高は非公表だが、今期もWBCやタイガース優勝の特需があった昨年と同等の利益を確保できそうな見通しだという。2024年の目標に、新規開拓の意味を込めた「拓」の文字を掲げたが、まだ実現できておらず、「来年度以降の課題」(久保田社長)だという。様々な分野のファン層に向けたグッズを念頭に、スポーツ分野以外の市場開拓にも本格的に力を入れる。
「ずっと野球に携わってこられた、恵まれた人生だった」
シャープ産業の組織改編に取り組んできた久保田憲史社長は年内で同職を退任し、同社の顧問に就任する。体制整備が一段落したタイミングで、後進に道を譲る形だ。ミズノにおいて約45年もの長きにわたり、同社のベースボール関連ビジネスに携わってきた久保田氏。「ずっと野球に携わってこられた、恵まれた人生だった」と考えている。
今でこそ、ミズノは国内のベースボールビジネス市場においてトップシェアの地位を築いているが、久保田氏がベースボールビジネスに関わり始めた頃は、まだまだ他社の後塵を拝する立場。「グラウンドへ出向いて、選手がどこのメーカーの用具を使っているか、双眼鏡で調べていたことを思い出す」と当時を振り返る。
同社のベースボールビジネスの隆盛を現場で見届けてきた生き字引でもある久保田氏だが、トップシェアになった現在も、「われわれは今でもチャレンジャー」だと語る。この挑戦する精神は、次の若い世代にも受け継がれるべき貴重な遺産だろう。
(年内の更新は27日で終了。年明けは1月6日から再開します)