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ゴールドウインが手掛けるアウトドアブランド
「ザ・ノース・フェイス」が創業50周年
右肩上がりの業績支える原動力とは──

update: 2016/12/28

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直営ビジネスに先鞭付ける

オープン当時のウエザーステーション。 小売り事業はブランド観の構築に一役買っている

オープン当時のウエザーステーション。
小売り事業はブランド観の構築に一役買っている

TNFの強みについて、森事業部長は「アウトドアブランドにおいて最高品質を作ること、またその商品を冒険家が使ってきちんと機能すること」だと語る。それがTNFらしさだという。ハイスペックである点が強みで、それが安心ブランドだという評価につながると考えている。前段で、タウンユース──ライフスタイルに浸透している現状に触れたが、当事者は「アウトドアブランドであるべき」という軸足を重視している。

高機能性に裏付けされた商品企画、タウンユースにも耐えうるデザイン性といった点が、TNFの強みと考えられるが、もう一点、国内のスポーツブランドと一線を画する要素がある。それはいち早く直営店やショップインショップなどショップビジネスに取り組んだことだ。1987年7月に設立された小売り事業を担う別会社、ウエザーステーション(現在は解散)がその始まりで(屋号も同じ「ウエザーステーション」)、東京・原宿に店舗を構えていた(現在は屋号を替え、同地区内に移転)。

現在では、ブランドによる直営店の出店が卸ビジネス──そのブランドを扱っている小売店にも相乗効果をもたらすことは広く周知され、小売店のメーカー直営に対するアレルギーも少なくなっているが、当時はメーカーの小売り展開に対するネガティブな意見は多かった。現在のゴールドウインにおける売上比率は、卸ビジネスと自社で管理している売り場「自主管理売り場」(在庫管理をゴールドウインが行う)がほぼ半々。直営店も数多く展開しているが、うまく卸ビジネス=小売店と住み分けて、共存共栄を図っている。

小売店ビジネスに取り組んだ成果は多岐にわたる。セルスルー(消費者に販売すること)により、エンドユーザーから直接、意見を聞いて品揃えや商品企画にフィードバックできることも大きい(卸ビジネスでは基本、エンドユーザーと触れ合うことはない)。また、棚卸資産(いわゆる在庫)管理の厳格化が進むこともメリットだ。個人的にはこの点が一番大きいと感じる。店舗の出店では、その投資からコンセプト作り、運営などのノウハウを得ることができる。SPA(製造小売り)を形にしたのも、スポーツメーカーの中では最も早い部類に入る。森事業部長は「それほど洗練されてはいない」と謙遜するが、TNFの強みの1つになっていることは間違いない。

出だしが暖冬傾向だった2016年秋冬シーズン。苦戦したブランドも少なくなかったが、TNFは12月途中までの累計で前年比を超えている(計画値もクリアしているという)。昨年のように記録的な暖冬のシーズンも、うまく乗り切った。過去の店舗運営の蓄積により、マークダウンのタイミングなどを的確に判断できる強みがある。

高機能性と顧客ニーズを追求・反映した商品企画、効率性およびブランドイメージに留意した店舗管理・運営が、TNFブランドをけん引する両輪と言えるだろう。

(今年のニュース配信は28日で終了、年明けは1月4日から再開します)