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ゴールドウインと事業提携契約したSpiber 株式会社
“蜘蛛の糸”の可能性に賭ける

update: 2015/11/10

「ザ・ノース・フェイス」の直営店で 巡回展示されているプロトタイプ

「ザ・ノース・フェイス」の直営店で
巡回展示されているプロトタイプ

人工的に“蜘蛛の糸”を開発し、アパレルなど様々な工業製品への実用化を目指しているSpiber(スパイバー) 株式会社(山形県鶴岡市)。アパレル分野では、スポーツメーカーのゴールドウインと事業提携契約を交わし、来年中の製品市場投入を視野に入れている。

量産化に道筋

Spiber 社が開発した人工の蜘蛛の糸「QMONOS™」(クモノス)は、タンパク質から微生物発酵によりアミノ酸を生成し、それを原料にした素材だ。様々な形態や機能性を付与できるため、アパレルのほか、自動車などのトランスポート関連、医療関連への応用も期待されている。

アパレル分野で事業提携契約を交わしたゴールドウインとの取り組みは、製品化へ向けて着実に前進している。同社のアウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」のアウターの既存モデル「ANTARCTICA PARKA」をベースに、「QMONOS™」を使用したプロトタイプを製作した。

ゴールドウインの工場で生産された点が重要で、早期の量産化=市場投入へ向けた布石になる。来年、2016年中の市場投入を目指しており、販売価格は既存モデルの約1.3倍に収まるよう、企業努力を続けている。「製品化して、採算ベースに乗らなければ意味がない」からだ。

発酵(という生成手法を用いた)素材には、市場において「1kg当たり100ドル(という価格)の壁がある」(Spiber 社 経営管理部門、上原知子 総務マネージャー)という。効率化、コスト改善を進めた結果、その壁を突破する見通しが立ったようだ。

大学時代の同じ研究室仲間が3人で2007年に起業したベンチャー企業であるSpiber 社。糸化、テキスタイル化に至るまで長い時間がかかった。量産化は少々、先になるが、多品種小ロット生産が可能な上、同じ工場で異なる生地を生産することができるという。既存のテキスタイル生産の常識を覆すかもしれない可能性を秘めている。