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アシックス、第13回インベストメントデー
「パフォーマンスランニング戦略」──これからの成長計画

update: 2025/11/25

主力カテゴリーの「パフォーマンスランニング」事業は 過去4年間で収益が倍増 (画像は説明資料から抜粋)

主力カテゴリーの「パフォーマンスランニング」事業は
過去4年間で収益が倍増
(画像は説明資料から抜粋)

アシックスが11月20日、第13回インベストメントデーを開催した。毎回テーマを決めて、投資家やメディア向けに現状と今後の取り組みを説明する機会で、今回は主力カテゴリーである「パフォーマンスランニング」を取り上げた。2020年度以降は増収増益を続け、着実に収益性を高めてきた。売上総利益率(粗利率)も50%を上回っている。

2025年度は売上高3,680億円、カテゴリー利益840億円を見込む

主力カテゴリーである「パフォーマンスランニング」は2025年度において、売上高3,680億円、カテゴリー利益840億円を見込んでいる。4年前の2020年度の売上高は1,590億円、カテゴリー利益は249億円だった。前年(2024年)度は売上高3,269億円、カテゴリー利益707億円で、2020年と比べ2倍以上に規模が拡大した。こうした改善が進んだ背景には、収益の低い90ドル未満の廉価な商材の販売を絞り込んだ点が挙げられる。販売単価が上昇し利益率が高まったと同時に、DIO (Days Inventory Outstanding)=在庫回転日数も改善した。

「パフォーマンスランニング」事業で主要なターゲットにしているのは、ランニングを目的にシューズを購入するコアなユーザー層だ。同社では「コアランニング」と呼んでいるカテゴリーで、その市場は直近の2年間で年率およそ7%の成長、その市場規模(日本、米国、欧州の合算)はおよそ1兆8,500億円に拡大していると分析する。そのうち同社のシェアは約10%。販売価格が90ドル以上のコアランニング市場は直近2年間で年率およそ17%増と伸びている。

また、世界のランニング人口も増加傾向にあり、特に新興国のインドでは、ロードレースの大会数が過去20年で1,700に急増するなど、有望な市場の1つに成長している。今年9月時点で、このコアランニング市場において初めて、シェア1位(日本・米国・欧州の合算)を獲得した。

順調な業容拡大には、自社の製品の進化も貢献していると分析する。ランナーの意見を聞いて、その意見を基に企画(米国・ボストン)、開発(日本)、試作(ベトナム)を組織横断型で協業する体制を構築。ニーズを反映した製品をいち早く市場投入できるよう注力してきた。また、2020年1月に始動した「C-PROJECT」の成果もあったようだ。「常に、”アスリートにとって何が良いか”を軸に、イノベーティブな製品開発を進めつつ、アスリートのパフォーマンスを最大限にサポートする活動を行う特別な部隊」である。レース向けのシューズである「METASPEED」シリーズは、ここから生まれた製品だ。

米国ビジネスが完全復調、トレイルランニングなど新規分野の開拓も進める

こうした地道な努力は、各地域で着実に成果を挙げている。収益性の改善が急務だった米国では、複数のランニング専門店で販売シェア1位となった。専門店全体でも、2022年に5位だったシェアが、2025年9月時点で20%、2位にまで上昇している。

今期は、世界の主要なマラソン大会──東京、ムンバイ、パリ、シドニー等において、シューズ使用シェアの第1位を獲得した。今後も主要ターゲットが多数参加するマラソン大会における使用シェア向上に力を入れる。

さらに業容を拡大するため、強化していくのは次の2点だ。1つ目は、90-160ドルの中価格帯のシェア拡大である。160ドル以上の市場と比較すると、2倍近く──約6,750億円の規模がある(日本・米国・欧州の合算)。競合他社のメジャーな商材がひしめき合う価格帯で、同社では「GT-2000」や「Gel-CUMULUS」などの競争力強化が課題だ。2点目は、トレイルランニング市場の開拓。市場規模は約2,600億円(日本・米国・欧州の合算)と見ており、まだまだ開拓の余地があると考えている。