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帝人ファイバーの機能素材戦略――
夏場に“快適性”を提供

update: 2012/08/27

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機能のハイブリッド提案も

12年春夏シーズンでは、“遮熱”効果のある「シーキューブ」や、汗を吸って繊維が動く「ファイバライブ」、ソフトコンプレッションが特徴のポリエステル(PE)100%ニット「デルタ」などを使ったウエアが好評だった。

「シーキューブ」はアパレルメーカー、スポーツの競技ウエア、ゴルフウエアなどに採用されている。フルダル(光沢なし)で特殊断面糸のため、太陽光を遮り冷感機能に優れる。「ファイバライブ」には、汗を吸って繊維が動き通気性を向上させる平面構造の「2D」と、汗を吸って組織が動くところまでは同じで肌面の生地に凹凸が出来、べたつきを軽減する立体構造の「3D」がある。「ファイバライブ」は部分使いでウエアにデザイン性を求めたケースもあった。動く繊維という目新しさが評価されているようだ。「デルタ」は世界展開している特殊な編物構造の軽量・ハイゲージニット。ソフトなストレッチ性、紫外線カット機能、防透機能を持つ。秋冬シーズンでは保温性を発揮する。

まだ市場に出ていないが、13年秋冬展で提案した新素材「トリプルドライ カラット」の評価も高い。速乾性や汗冷え防止、べたつき防止など、あらゆる汗処理機能を兼ね備えた。肌面にPEの撥水糸を使った3層構造で、吸汗・拡散を促し、汗の戻りを防ぐ機能を持つ。肌面は撥水糸、中間に吸水層、表地に拡散層を配置した。肌面の撥水糸は原糸レベルで撥水剤を練り込んでいるため、その機能性を長く持続することができるという。

「トリプルドライ カラット」は前出の「デルタ」や「ファイバライブ」との組み合わせが可能なため、様々な風合いや機能性の生地を作ることができる。すでに一部のメーカーとの間では、シーズン前倒しで13年春夏の採用が決まっているという。スポーツメーカーが多いそうだが、受注はニットのシャツ地が先行しているようだ。

ビジネスシーンで拡大を模索

ビジネスやカジュアルユースなどスポーツ以外の分野への素材提供量は11年春夏に比べると12年春夏の方が増えている。主にニットのシャツ地のニーズで、「節電ビズ」などのシーンで提案されるケースが多いとみられる。

現在、13年春夏の展開へ向け、アパレルメーカーとの間でどうやって打ち出していくかその中身を詰めているところだ。ブランド名を前面に押し出すのか、ダブルネームでアピールするのか、エンドユーザーに認知してもらいやすい手法を模索している。

アウトドアやアスレチック分野が主戦場であることに変わりはないが、こうした日常シーンへの提案、新規分野の開拓は着実に進んでいる。