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主要スポーツ各社──DTCの現在地(上)
ブランドの世界観を発信する拠点に位置付け

update: 2020/07/31

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媒体機能を持つ自店舗

DXを意識したナイキのコンセプトストア 「Nike Guangzhou」 (ニュースリリースより抜粋)

DXを意識したナイキのコンセプトストア
「Nike Guangzhou」
(ニュースリリースより抜粋)

直営店の定義や考え方も、以前に比べると変化している。ショールームの意味合いが強かった直営店は、今では収益の確保、ブランド観の発信基地、顧客とのコミュニケーションツールなど、様々な面を持つようになった。

直営店ビジネスが最も進んでいるのは、ゴールドウインだろう。2020年3月期時点での直営店舗数は155店(前期比7店増:出店13、退店6)。過去5年間で24店舗増加した。主力ブランド「ザ・ノース・フェイス」を中心に、立地特性や品揃え、ターゲット層別に新業態の開発を続けている。同一ブランドの様々な切り口を直営店で表現・発信することで、既存に止まらず新規客の開拓にもつながっている。

ゴールドウインのもう1つの特徴は、自主管理売り場と呼ぶNSC(ナショナル・スポーツ・チェーン)を主体としたコーナー展開。これは直営と異なり、売り場を持つ小売店が運営するショップだ。もちろん同社の営業スタッフがサポートするが、セルフ販売を原則とするスポーツ小売店において、貴重なブランド発信の場、収益確保のツールになっている。ミズノやアシックス、デサントなど、アスレチック種目を主力にするメーカーの直営店展開も進んでいる。しかし、数の面から見れば、ゴールドウインが頭抜けて多い。

外資系ブランドでもDTCの強化は進んでいる、ナイキ社のDTCビジネスは、2020年5月期時点で、「Sales through NIKE Direct」(DTC)の売上高が123億8,200万米ドル(約1兆3,248億7,400万円、同)、5.4%増と堅調な推移だった。売上比率は33.1%(3.1ポイント増)と増加している。

加えて同社は、昨今注目を集めている「DX」(いわゆるデジタル・トランスフォーメーション)にも積極的に取り組んでいる。今年7月、China(中国)の広州にDXを試みる新しいコンセプトストア「Nike Guangzhou」をオープンした。モバイル端末、自社アプリを活用し、いわゆる“One to One”マーケティングの手法を使った顧客の囲い込み策を試みている。これが定着するかどうかは未知数だが、直営店という存在は着実に変化・進化していることが分かる。(続く)