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主要国内上場スポーツメーカー ── 過去5年間の収益動向を見る
第1回:アシックス
売上規模が60%拡大、営業利益は30%増に

update: 2018/01/17

 アシックス、2012年3月期 財務諸表(表1)

アシックス、2012年3月期
財務諸表(表1)

2018年の初めに、国内の主要な上場スポーツメーカーの過去5年間の収益動向をまとめてみた。第1回目は、国内売上規模が最も大きいアシックスを取り上げる。途中、決算期を変更しているため、比較する決算は「2012年3月期」と「2016年12月期」で決算期は異なるが、収益の変化を捉える参考にはなるだろう。

国外ビジネスが成長エンジン

アシックス、2016年12月期 財務諸表(表2)

アシックス、2016年12月期
財務諸表(表2)

アシックスは過去5年間の内に、売上規模が60%拡大し、営業利益は30%増加した。12年3月期の連結売上高は2,477億円だったが、5年後の16年12月期には3,991億円にまで拡大している。これは全売上のおよそ3分の2を占める国外ビジネスの後押しが大きい。欧州、米州を中心にして収益を着実に伸ばしてきた。数年前からは、アジア地域の売り上げも収益に貢献するようになってきた。

営業利益は、12年3月期が196億円だったものが、16年12月期には254億円に増加している。経常利益も似たような推移を辿ってきた。売上高総利益率(粗利率)は12年が43.4%、16年では44.2%と0.8ポイント増加している(表1・表2を参照)。

財務面では、「効率性指標」において、商品回転率が12年に3.0だったものが16年には2.4まで低下している。販管費率も12年が35.5%、16年が37.9%と増加している。粗利率が改善しているため、商品の回転率を再度、高める方策が必要だろう。一方、「流動性指標」は概して維持、改善傾向にある。

課題はアパレルの拡大

アシックス、2012年3月期 部門別売上高(表3)

アシックス、2012年3月期
部門別売上高(表3)

次にカテゴリー別、製品別の売上推移を見てみる。カテゴリー別売上高の項目の区分けが一部、異なっていることに留意されたい(表3、表4を参照)。主力の「フットウエア」(スポーツシューズ)は、12年から16年の5年間で、80.3%増と倍増近い伸び率を示している。引き続きランニングシューズがけん引役である。16年では、全シューズの約70%を占めている。

12年と16年でカテゴリー分けが異なるが、アスレチック系シューズも順調に売上規模が拡大した。12年は320億円だったが、16年には約770億円(「トレーニング」と「コアパフォーマンススポーツ」の合算)と倍増以上の伸びだ。

アシックス、2016年12月期 部門別売上高(表4)

アシックス、2016年12月期
部門別売上高(表4)


課題はアパレル。かねてからの強化アイテムだが、なかなか売上規模が拡大していない。12年は468億円だったが16年は511億円で、9.2%の伸びに止まった。また、エクィップメントも180億円規模からほとんど変化がない。収益の大部分を「フットウエア」に頼る構造は、5年前と基本的には変わっていない。今後も、アパレルビジネスの強化が継続した課題だろう。(続く)