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ゴールドウインが手掛けるアウトドアブランド
「ザ・ノース・フェイス」が創業50周年
右肩上がりの業績支える原動力とは──

update: 2016/12/28

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ザ・ノース・フェイス原宿店

ザ・ノース・フェイス原宿店

ゴールドウインの基幹ブランド「THE NORTH FACE」(ザ・ノース・フェイス)が創業から50周年を迎えた。1966年に米国・サンフランシスコで創業した同ブランドは、国内では1978年から同社が販売を始めた。現在では年間推定300億円規模のブランドにまで成長している。アウトドアのシリアスユーザーをはじめ、タウン(ライフスタイル)ユースとしての人気も高い。右肩上がりの成長を続けているその強みは何か。

軸足はアウトドア、汎用性ニーズが伸び代に

同ブランドは1966年、米国・サンフランシスコで創業者のダグラス・トンプキンス(Douglas Tompkins)氏が立ち上げたアウトドアショップがルーツで、その屋号が「ザ・ノース・フェイス」(TNF)だった。山の“北壁”──登山者にとって最もハードな登攀ルートを意味する言葉を採用した。アウトドアユーザーのニーズに応えられる高機能な製品を提供するという意味合いが込められている。

本国の米国では現在、多数のアパレル関連ブランドを保有するVF Corporation(ブイエフコーポレーション)の傘下に入っているが、日本ではゴールドウインが1994年、日本における商標権を取得済みだ。昨今では、タウンユースブランドとしての人気も高まる一方だが、本国が発信する“アウトドアのシリアスユーザーへ向けた高機能商材の開発”という軸足はしっかり保っている。ちなみにゴールドウインによるライセンス品の生産は1981年から始まった。当時、テントや寝袋、ダウンジャケットなど展開アイテムが限られていたライセンス品において、スイングトップやパンツ、ベストなどの新しい商材を企画・販売した。

幅広い汎用性アイテムも強みの1つ (17年春夏商材)

幅広い汎用性アイテムも強みの1つ
(17年春夏商材)

最近のファッション雑誌やレディスショップなどでは、TNFがファッションブランドとして認知されている。アウトドアブランドだという意識はあまりないようだ。これはTNFがエンドユーザーのニーズを捉え、その要素を商品企画に反映させていった結果でもあるが、この点は米国と異なる成長過程を歩んだ象徴的な現象でもある。「米国では品揃えのほとんどがアウトドア品で、(出店立地は)都市部は少ない。日本のように都市部立地でライフスタイルという編集ではなく、実用品がメーン」(森光 ノース・フェイス事業部長)という市場特性の違いが影響している。日本では、「おそらく(ブランド全体の商材において)70%くらいがタウンユースで買われているのでは?」と森事業部長は推測する。しかし、こうした新しい分野への派生商品はライフスタイルだけではない。ランニングの「パフォーマンスライン」やアスレチックの「マウンテンアスレチック」などは、機能性重視の商品群だ。

数年前ブームになった“山ガール”では、TNFが「格好いいブランドとして認知された」(森事業部長)。その一方で、最近はファッショントレンドがアウトドアとオーバーラップしている面もあり、相乗効果で認知度が高まったようだ。しかし、こうした経緯は結果論だと考えられる。山ガールがはやっていた当時、トレンド色の強いアイテム群──“山スカート”などからは距離を置いていたTNF。「ブランド観を保てる範囲で商品を企画してきた」と言った方が正しいだろう。同社の座右の銘とも言える“コア&モア”という言葉がそのことを裏付けている。ただし、昨今の汎用性のある商材では、オーバースペックでないものも増えているという。

本国・米国のスタッフも、ライフスタイルを意識した日本の取り組みに関心を持っている。先月11月、ニューヨーク五番街に出店した旗艦店で、人工合成クモ糸を使用した「MOON PARKA®」(ムーンパーカ)のプロトタイプを展示したが、同時にほかの日本企画商品も販売した。こうした取り組みを見ても、米国において日本企画が注目を集めていることが分かる。ちなみに日本の一部の直営店では、米国企画の商材も販売されている。