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ミズノが今仙と共同開発──
陸上選手向けの“義足板バネ”が完成

update: 2016/07/08

ミズノと今仙技術研究所が 共同開発した義足板バネの プロトタイプ

ミズノと今仙技術研究所が
共同開発した義足板バネの
プロトタイプ

ミズノはこのほど、義足などを製作する福祉機器メーカーの株式会社 今仙研究所(岐阜県各務原市)と共同で、陸上選手向けのカーボン製の“義足板バネ”を開発した。今年10月から、今仙を通じて販売を開始する予定だ。既存の技術を活かし、新しいビジネスを構築していく狙いもある。

実用化へ向け、有力選手が着用テスト

パラリンピックの認知度向上と共に、さらに義足板バネの普及をきっかけにスポーツへの参加の機会を増やそうと考えていた今仙技術研究所。2002年から開発に着手し、北京パラリンピックの走り幅跳びで銀メダルを獲得した山本篤選手の協力の下、改良を重ねてきた。2007年以降は一時期、開発が滞っていたが、2014年に厚生労働省の助成金を得たこともあり、取り組みが再開した。CFRP(炭素繊維。いわゆるカーボン)の加工技術を持つミズノに共同開発を提案し、今回、カーボン製の義足板バネのプロトタイプ開発に漕ぎ着けた。

義足板バネのプロトタイプを装着し 試走する山本篤選手(ミズノ本社にて)

義足板バネのプロトタイプを装着し
試走する山本篤選手(ミズノ本社にて)

カーボン製義足板バネの特徴は、日本人の体形に合わせ軽量化が図られている点。ビギナーからトップアスリートまで、幅広いレベルの陸上選手が対象だ。大腿義足、および下腿義足の両選手が使用できる。今回はランニングやスプリント(全力疾走)に絞った設計だ。今後は、山本選手の種目、走り幅跳びや、軽スポーツ――ジョギングなどを想定した開発も計画している。

現在、世界の義足板バネ市場は、ドイツのオートボック社製が60%を占めている。外資系メーカーが全体の90%を占めており、日本製の義足板バネの使用率は「競技会レベルで10%程度」(今仙技術研究所、後藤学 技術部技術二課長)だという。こうした現状を打開するべく、今仙技術研究所とミズノが共同開発に力を入れた。

今後の課題については、「かなり多い」と語るミズノの研究開発部、宮田美文氏。「体重差や競技別の仕様もこれから整備していく」という。想定される販売価格は25万円程度。ミズノが今仙技術研究所に卸して、今仙が窓口になり販売する。競合他社との差別化を図るため、「機能面の向上や、価格も下げられるよう努力したい」(ミズノ、金子靖仙 研究開発部長)。