人の流れが変わった?
今なお続く「H&M」銀座店の行列
東京・銀座の「H&M」日本1号店は、オープンから3週間経っても行列は続いている。当初2時間と言われた待ち時間も今は数十分になったとはいえ、行列は絶えない。銀座の人の流れが変わってきているとの指摘もあるほどだ。
1000平方メートルの店舗面積は1階~3階がレディス、地下1階がメンズというフロア構成。クロスMDともいえる、それぞれのゾーンでコーディネートが組めるようにアイテムが多様に配置され、それが店内をくまなく歩かせる工夫にもなっている。
しかも、確かに安い。コートは1万円台前半が多く、パンツやニットなども4千円台から6千円台が目立ち、シャツやバッグなどは2千円台も少なくない。アクセサリーは千円前後が充実している。まとめ買いする客が多いのもうなずける。
銀座という立地からか、日本での直営1号店だからか、特徴的なのはベーシックなデザインが多いことだ。ただ、デザインのバリエーションが豊富で、新商品も随時投入されている。そして、何よりもカジュアルなモノでもフェミニンな雰囲気や、素材やディテールに今の時代を感じさせる要素があり、長く着られそうな”顔“もしている。ユニクロとは大きな違いがあるといえるだろう。
不便な点をあげれば、買い物用のかごが用意されていないことだ。そのため、客は買いたいものを手に持って移動するしかない。そのせいか、清算を済ませた後で再度レジに並ぶ人もいる。独自の仕組みはそんなところにもあるかもしれない。
また、多くの客で終日あふれかえっているにもかかわらず、店内はさほど乱れていない(いや、乱れていないように見える)。理由のひとつは、ディスプレイテーブルや棚がほとんどない設計で、大半の商品はハンガーに吊るされている。コートやジャケットだけでなく、パンツやニット、バッグ、アクセサリー、フラットな靴さえハンガーにかけられている。そのため、試着後の商品はラックに集められ、すばやく売場に戻されているのだ。数店先の「ZARA」と比べると一目瞭然。それだけで差がつくとは思えないが期待が大きいだけに初来店のイメージは強いし、心に残る。やはりチェックしておきたい点は多そうだ。
(有限会社ビジョンクエスト・田中千賀子)
ファッション誌も曲がり角、切磋琢磨が求められる!!
個人的に言わせてもらえば、ファッション雑誌の編集者やライターは業界の現状課題や製品に関しての知識をあまり持ち合わせていないように見受けられ、彼らの論調がムードや狭い範囲での商品トレンドだけに終始しているように思えてならない。
今回はファッション雑誌について考えてみたい。もともと雑誌は頻繁に創刊・休刊(廃刊)されるものだが、2008年はそれまでにも増して休刊が多かったのではないか?
講談社は、30歳前後の女性をターゲットにしてきた女性誌「Style」を9月発売号を最後に休刊した。また「BOAO」(マガジンハウス)と「GRACE」(世界文化社)は、11月発売の12月号で休刊することをそれぞれ明らかにしている。
平成16年9月創刊の「BOAO」は20代後半から30代前半、昨年3月創刊の「GRACE」は主に40代をターゲットに刊行してきた。
一方、男性誌では雑誌「LEON」の前編集長・岸田一郎氏が創刊した富裕層の男性向け雑誌「zino」を4月24日発売の6月号で休刊し、Webサイト「@zino」も5月26日に休止した。
各雑誌の収益は、販売部数よりも広告収入の多寡によるところが大きいことは広く知られている。休刊になった雑誌はいずれも収益性が低かった。つまりは部数もさることながら広告収入が低かったといえる。
もちろん、広告出稿料が減少したのは不景気という理由も大きいが、雑誌が持つ影響力が小さくなっているという側面も大きいのではないか?
雑誌の収入の大半以上が広告出稿料に頼っていることは広く知られている。極論をすればファッション雑誌は広告のカタマリともいえる。実際に掲載されている商品はその雑誌のスポンサーブランドがかなりの数を占めている。「世間には知られていないが、面白い個性的なブランドを編集者が発掘してくる」という物語は皆無に近くなっていると言えるのではないだろうか。
そして読者もこうした構図をおそらくうすうすは感づいている。気づいていないと思っているのは出版社だけではないか。そういう業界構造がバレてしまえば「この着こなしが新しい!!」といくら力説したところで、真剣に受け取る読者はそう多くはない。
おそらく、ファッション雑誌の影響力と広告出稿料が以前の水準に回復することは今後ありえない。「人気モデルにスポンサーの洋服を着せたら売れる。人気タレントを表紙に使えば販売部数が伸びる」という安直な誌面作りが通用する時代は過ぎ去った。それを認識しない限りファッション雑誌の苦戦はさらに続くといえる。
(ジャーナリスト 南 充浩)