「リーチ規制」の日本版が国会通過へ
どうなる?アパレル業界への影響
「リーチ規制」(*)とは化学物質の登録、評価、承認、使用制限などを定めた法律で、EU諸国(ヨーロッパ連合)の熱心な立法措置を手始めに世界中に影響が及び始めている。使用する化学物質の実態を隠すことなく開示し、人間を含めた地球環境を持続させるという大きなテーマへの取り組みだ。鉛、六価クロム、カドミウム、水銀など、誰でもが有害とわかるもののほか、どんな些細な化学物質であれ、その安全性が完全に証明されなければならないという法律だ。その対象はEUでは10万種とも言われている。乳幼児が口にするなど危険性が明確に理解できるものだけでなく、一般的な製品(例えば大人用の衣服など)であっても、その素材や製品(成型品)の責任は全品種に及ぶという。今まで見過ごされてきたものを含め、ありとあらゆる組成物質に警戒の目を向けなければならない。海外の外注工場での使用も例外ではない。
(参考)これは国連標準のGHS表示「(低)毒性、皮膚刺激性」マーク
ファッション業界のイベント「プルミエール・ビジョン」、2月のパリ展示会でもこの「リーチ規制」のブースが設けられ、来場客に大きな衝撃を与えたようだ。従来から安全性に敏感なEUでは過去の規制のおかげで、癌や不妊の発生率などが世界的に見ても低い水準に保たれていると自負している。少子化の波はどこも同じ、折角なら生まれてきた命や健康を大切にしようとする先進欧州の意気込みとも賞賛できる。しかし化学品業界では規制により企業競争力がそがれると「恨み」の声もあるようだ。
特に評価(検査)や登録にかかる費用が1件当り数百万円以上と負担が多すぎることも問題だ。
日本でのこの「リーチ規制」の趣旨に沿った法律が、09年春の国会で審議、成立へ向かっている。欧州の検査や報告義務の主体は企業だが、日本の場合、検査などの主体とその経費負担は国の役割りになりそうだという。世界の先進国が、生命や健康へのきびしい配慮にアクセルを踏むのは当然ながら、そのウラには中国など規制の甘い途上国へのけん制や、製品の過度の流入に待ったをかけたい狙いがあるのかも知れない。
さて繊維、アパレル業界への影響はどうだろうか。最も神経を尖らすのは染料、助剤メーカーなどだろう。ついでジーンズの洗い専門業などだろう。日本の場合、すでに充分に規制への配慮や処置は済んでいるとの見方もあるが、規制のさらに強化されるEUなどへの生地輸出、もちろん国内向けの製品出荷などへの対応など、まだまだ緊張が続きそうだ。
(*)REACHは Registration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals の略